著者
渡邊 法男 山田 卓也 吉田 知佳子 細川 佐智子 中川 千草 安村 幹央 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.40-42, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は40代男性, 原発不明がん, 肺転移, 脊椎転移 (T5-6) . モルヒネ硫酸塩徐放錠, ナブメトン錠, アミトリプチリン塩酸塩錠で疼痛治療中に, 腫瘍の進展に伴う脊髄圧迫部位以下の麻痺が完成し, 同時期から, 高度の腹部膨満感, 便秘を認めた. 各種腸管蠕動亢進薬を使用したが症状は改善しなかった. そこで, モチリン受容体アゴニストとして, 自律神経系の麻痺による消化管運動障害改善効果が報告されているエリスロマイシン点滴静注 (1回500mg, 3回/日) を開始したところ, 症状が著明に改善した. その後, エリスロマイシン錠 (1回200mg, 3回/日) へ変更し, 良好な排便コントロールを得ることができた. エリスロマイシンは, 各種腸管蠕動亢進薬が無効な腫瘍の脊髄圧迫など麻痺性の消化管運動障害による便秘に対し有用な治療薬の一つであると考える.
著者
渡邊 法男 細川 佐智子 山田 卓也 吉田 知佳子 鈴木 瑛子 安部 成人 伊藤 真也 丹羽 伊紀詠 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-32, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
11

目的:フェンタニル舌下錠(Fentanyl Sublingual Tablets:FST)の有用性および安全性について調査を行い,FSTの適正使用に向けた問題点について検討した.方法:薬学的管理を行ったがん性疼痛入院患者のうち,突出痛に対してFSTを使用した18名を対象に,FST使用前後の疼痛スコアおよび副作用(嘔気・嘔吐,傾眠)の変化について調査した.結果:FST使用前後の疼痛スコアは,投与直前6.4±2.4と比較して,投与30分後3.4±2.8と有意な改善が認められた(p<0.01).傾眠は,投与直前と比較して,投与30分後および2時間後に有意な発現の増加が認められた(p<0.05).嘔気・嘔吐は,有意な変化を認めなかった.FST使用患者9名に口腔乾燥が出現し,口腔乾燥出現時には,疼痛スコアおよび副作用に有意な変化を認めなかった.結論:FSTの適応を判断する上で口腔状態の観察は必須で,十分な口腔ケアを行った上でFSTを使用すべきである.また,傾眠の副作用が高頻度に出現する可能性が示唆された.