著者
渡邊 法男 山田 卓也 吉田 知佳子 細川 佐智子 中川 千草 安村 幹央 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.40-42, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は40代男性, 原発不明がん, 肺転移, 脊椎転移 (T5-6) . モルヒネ硫酸塩徐放錠, ナブメトン錠, アミトリプチリン塩酸塩錠で疼痛治療中に, 腫瘍の進展に伴う脊髄圧迫部位以下の麻痺が完成し, 同時期から, 高度の腹部膨満感, 便秘を認めた. 各種腸管蠕動亢進薬を使用したが症状は改善しなかった. そこで, モチリン受容体アゴニストとして, 自律神経系の麻痺による消化管運動障害改善効果が報告されているエリスロマイシン点滴静注 (1回500mg, 3回/日) を開始したところ, 症状が著明に改善した. その後, エリスロマイシン錠 (1回200mg, 3回/日) へ変更し, 良好な排便コントロールを得ることができた. エリスロマイシンは, 各種腸管蠕動亢進薬が無効な腫瘍の脊髄圧迫など麻痺性の消化管運動障害による便秘に対し有用な治療薬の一つであると考える.
著者
山近 友里恵 山田 深 山田 卓也 中島 佐和子 寺林 大史 大田 哲生 木村 彰男
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2009 (Released:2010-04-21)

【目的】床面に登坂角度をつけた傾斜トレッドミル歩行における下肢関節運動および筋活動の特性を明らかにし,臨床での有用性について検討する.〈BR〉【方法】対象は本研究の内容について同意を得た健常成人3名(24.0±0.0歳).平地(Flat Floor:FF),傾斜なしトレッドミル(Flat Treadmill:FT),坂道(傾斜角12%)(Up-Slope:US),傾斜トレッドミル(同12%)(Tilt Treadmill:TT)の順に3分間の休憩を挟んで歩行を行った.FF,US歩行速度は主観的快適速度とし,FT,TT歩行はそれぞれFF,USと同一に設定した.歩行中の下肢筋電図および股関節角度変化を記録するために左側中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋筋腹上に表面電極を,股関節に角度計を貼付し,テレメータを介して各波形を記録した(サンプリング周波数2 kHz).また,圧センサーを足底に設置して歩行周期を同定した.解析はオフラインで行い,筋電波形を全波整流した後,50歩行周期分を加算平均し,各条件におけるパターンの相違を検証した.〈BR〉【結果】大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋の表面筋電波形パターンは個人差が大きく一定の傾向は見られなかったが,中殿筋においては立脚初期から中期にかけて筋活動の増大が共通して確認された.特にTTおよびUS歩行では二峰性のパターンを示し,中殿筋の筋活動は傾斜のない歩行と比べ相対的に増大していた.また,TT歩行時の筋活動はUS歩行と比べ全般的に高電位であった.股関節角度はTTおよびUS歩行において,遊脚後期から立脚初期にかけて屈曲方向へ増大する傾向が認められた.〈BR〉【考察】斜面歩行は平地歩行と比べ,股関節外転筋群への運動負荷を効率的にかけ得ることを示した.さらに,トレッドミルを用いることで,筋活動をより増大させることが可能であると示唆された.
著者
山田 卓也 福田 吉治 佐藤 慎一郎 丸尾 和司 中村 睦美 根本 裕太 武田 典子 澤田 亨 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.331-338, 2021-05-15 (Released:2021-06-03)
参考文献数
29

目的 本研究の目的は,地域在住自立高齢者に対する膝痛改善教室(教室)が医療費の推移へ与える効果を検討することであった。方法 2015年1月から2月の間に山梨県都留市A地区在住の自立高齢者を対象に非ランダム化比較試験として4週間の教室を実施した。本研究の分析対象者は,教室の介入群で教室のすべての回と最終評価に参加した28人と,教室の非介入群で再調査にも回答のあった70人のうち,死亡・転出者と対象期間に社会保険に加入していた者を除外し,医療費データの利用に同意が得られた49人(介入群20人,非介入群29人)とした。医療費データは,2014年1月から2018年12月の傷病名に関節症のコードを含む医科入院外レセプトとそれに関連する調剤レセプトの合計を用いた。教室開催前の2014年を基準とする2015年から2018年までの各年の医療費の変化量を算出し,その間の医療費の推移に及ぼす介入の効果を線形混合効果モデルで分析した。結果 医療費の変化量の推移に対する教室の効果(調整平均値の群間差:介入群−非介入群)は,対象全期間を通じて有意差は認められなかった(全期間−5.6千円/人,95%CI:−39.2-28.0)。各年では,2015年9.3千円/人(95%CI:−39.6-58.3),2016年−2.0千円/人(95%CI:−44.4-40.5),2017年−10.3千円/人(95%CI:−42.5-21.9),2018年8.2千円/人(95%CI:−39.1-55.4)であり,介入による有意な医療費抑制効果は確認されなかった。結論 今後は介入プログラムや対象人数を増やすなどの改善を行ったうえで,引き続き検証する必要がある。
著者
木村 真樹 山田 卓也 木山 茂 関野 考史 松尾 浩 竹村 博文
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.2712-2716, 2006-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10
被引用文献数
6 5

症例1は40歳台の女性.主訴は検診での血液検査異常. CA19-9高値. CTで膵尾部に辺縁と内部が造影される嚢胞性腫瘍を認めた. MRIでは内部に造影T1強調像で高信号, T2強調像で膵実質性部分と同等の信号の壁在結節を認めた.膵粘液性嚢胞腫瘍と診断し,手術を施行したところ類上皮腫を合併した膵内副脾であった.症例2は50歳台の男性.主訴は検診の超音波検査での膵腫瘤.単純CTで周囲に均一な軟部濃度を有する嚢胞性腫瘍を認め, MRIで3mm大の壁在結節を認めた. Dynamic studyで壁在結節の濃染パターンは脾臓と酷似しSPIO造影で信号低下あり膵内副脾に合併した類上皮腫と考え経過観察中である. SPIO造影剤は網内系細胞に採取され正常脾の信号を低下させ副脾の診断が可能となる. dynamic studyとSPIO MRIで膵内副脾に合併した類上皮腫の術前診断が可能である.
著者
渡邊 法男 細川 佐智子 山田 卓也 吉田 知佳子 鈴木 瑛子 安部 成人 伊藤 真也 丹羽 伊紀詠 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-32, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
11

目的:フェンタニル舌下錠(Fentanyl Sublingual Tablets:FST)の有用性および安全性について調査を行い,FSTの適正使用に向けた問題点について検討した.方法:薬学的管理を行ったがん性疼痛入院患者のうち,突出痛に対してFSTを使用した18名を対象に,FST使用前後の疼痛スコアおよび副作用(嘔気・嘔吐,傾眠)の変化について調査した.結果:FST使用前後の疼痛スコアは,投与直前6.4±2.4と比較して,投与30分後3.4±2.8と有意な改善が認められた(p<0.01).傾眠は,投与直前と比較して,投与30分後および2時間後に有意な発現の増加が認められた(p<0.05).嘔気・嘔吐は,有意な変化を認めなかった.FST使用患者9名に口腔乾燥が出現し,口腔乾燥出現時には,疼痛スコアおよび副作用に有意な変化を認めなかった.結論:FSTの適応を判断する上で口腔状態の観察は必須で,十分な口腔ケアを行った上でFSTを使用すべきである.また,傾眠の副作用が高頻度に出現する可能性が示唆された.
著者
松山 隆生 角 泰廣 山田 卓也 村瀬 勝俊 吉田 直優 尾関 豊
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.329-333, 2004-03-01
被引用文献数
4

Crohn病に合併した回腸癌の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,1999年6月20日に腹痛で前医を受診した.イレウスの診断でイレウス管造影を施行しCrohn病と診断された.その後もイレウス症状が再燃し改善しないため12月23日に回盲弁から30cmの狭窄部を切除された.切除標本の病理検査結果は中分化腺癌で断端,剥離面に癌陽性であった.追加切除目的で2000年2月14日当科に転院した.Crohn病に合併した回腸癌と診断士2月18日結腸右半切除術,膀胱壁合併切除術を施行した.初回手術の吻合部の近傍に辺縁が不明瞭な隆起性の病変を認め,病理検査結果は中分化腺癌で,治癒過程にあるCrohn病が背景粘膜に認められた.Crohn病の高度の狭窄病変に対しては腫瘍の可能性も念頭においた精査,治療が必要であると考えられた.