- 著者
-
渡部 謙一
- 出版者
- 北海道教育大学
- 雑誌
- 北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.1, pp.315-325, 2020-08
現代日本において吹奏楽という音楽ジャンルは,数十年前「ブラスバンド」と呼ばれていた時代から比べ隔世の感を禁じ得ないほど発展し,一文化として定着していると言っても過言ではないと思われる。全日本吹奏楽連盟の加盟団体数は14000団体を超え,学校部活動を始め,生涯教育としても非常に数多くの人々によって愛好されている。また様々な楽譜や音源・映像等の出版物も流布されて多彩な活動が展開されている。しかしながら,演奏のためのメソードにおいて,多くの教則本が出されてはいるがそのほとんどは,観念的でイメージを優先した著述のものばかりで,必ずしもプリンシプルとして根源的な論述まで至っているものは,残念ながら,無い。中には科学的な根拠の不確かな「言い伝え」にも似たものも多く,学術的科学的根拠に基づいたものを見つけるのが難しいという現状である。本研究は,そういった楽器演奏のためのメソード,特に金管楽器の技術的根本に目を当て,演奏者の主観やイメージといったものが介在する以前の,どんな演奏者にとっても普遍的で重要な基本的な諸要素〜発音原理や呼吸法〜について論じるものである。