著者
玉盛 令子 金澤 寿久 末吉 美紀 木村 佳代 与儀 哲弘 仲田 千賀子 湧川 尚子 貞松 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.699, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】今回、退院前訪問指導実施後、理学療法士(以下PT)が問題点としてアプローチを行った住宅改修箇所が日常生活上有効利用されているか、又、介護者への指導が適切であったのかについて調査を行ったので報告する。【対象及び方法】退院前訪問指導実施後に自宅復帰した脳血管障害症例45名を対象とした。方法は、退院前訪問指導実施時、PTが行った指導内容や住宅改修箇所が的確であったか、又、退院後有効利用されているかを再訪問し調査した。退院後自宅生活に適応し、しているADLが行えている対象者を指導適切群、退院後住宅改修箇所が未使用であったり、住宅改修そのものに不備な点が見られたり、介護者の介助方法の理解不足が認められた対象者を指導不適切群と群分けを行った。そしてADL変化に対しFIM、本人の意欲に対し意欲の指標、介護力に対し介護力スケールと過剰介護度スケールを使用し両群を比較した。【結果】指導適切群は24名で、(FIM平均70. 6点、意欲指標9.3点、介護力スケール17.1点、過剰介護度スケール:過剰であるが5名、過剰でないが19名)であり、指導不適切群は21名で(FIM平均60.1点、意欲指標8点、介護力スケール15.4点、過剰介護度スケール:過剰であるが15名、過剰でないが6名)であった。マンホイットニーの検定の結果、FIMでは有意差が認められなかったが、意欲の指標、介護力スケール、過剰介護度スケールにおいて有意差が認められた。【考察】今回の調査より、指導適切群では、住宅改修箇所が有効利用され、介護度スケールにおいても[過剰でない]を示し、介護者のADL面に対する理解が高く、又、意欲の指標や、介護力スケールの平均値が指導不適切群に比べ高値を示していた。指導不適切群では、住宅改修不足、過剰改修、介助者に対してのセルフケア指導不足があげられた。又、意欲、過剰介護、介護力スケールに有意差が認められ、過剰介護度スケールにおいても[過剰である]を示し、介護者のADL面の理解が低く、結果指導適切群に比べ低値となった。調査より、PT・業者・家族間の改修箇所に関する意見が相違したまま改修工事を着工した例や、病棟内で実際に「しているADL」をそのまま患者の住環境に適応できるものと予測し、PTの住環境に対する確認が不十分なままに自宅退院した結果、家族の過剰介護やADL能力低下を招いていると推測された。【終わりに】今回、退院前訪問指導実施後自宅復帰した症例45名に対し、PTが指導した住環境設定が有効利用されているか調査を行った。結果、PTが病棟生活遂行レベルと自宅生活とを同一化し指導、改修を施行したケースが多くあげられた。今後これらの問題点を再度見直し退院時訪問時に住環境における日常生活にどれだけ適応出来るかについての視点向上が必要だと考えられた。