著者
湯浅 阿貴子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.248-260, 2015-12-25

本研究の目的はゲーム遊びで生起した「ずる」の場面に着目し,「ずる」が継続的に観察された幼児の行動記録から行動の変容プロセスを明らかにした。その際,他者との相互交渉が幼児の意識及び行動の変容を促す要因と繋がっているのかについて検討した。結果,(1)望んだ状況にするための「ずる」が一定期間繰り返されることによって周囲が疑問を抱くようになる,(2)周囲の幼児が「ずる」に対して疑問や不満を抱き,指摘するようになる,(3)「ずる」を行う幼児が指摘を受け,自身の行動の意味や結果について考える機会を得る,(4)突然変化するものではなく徐々に変容していく,という4つの段階を経ていることが明らかとなった。
著者
湯浅 阿貴子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.29-39, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
22

本研究は,ゲーム遊びに生じる「ずる」への保育者のかかわりについて明らかにすることを目的とした。10名の保育者の逐語録をM-GTAによって分析し,保育者の実践知を図式化した。その結果,保育者のかかわりは《実態を把握する》カテゴリーから《かかわり方の判断》カテゴリーを通して,《教育的かかわり》カテゴリーへと段階を経ていることが示された。そして,保育者は個々の幼児のルールに対する認識によってかかわり方を変化させており,「ずる」に対して問題意識をもつ幼児が出てくる時期を指導の基点としていた。「ずる」に対するかかわりは,〈権威的かかわり〉と,〈認知葛藤的かかわり〉を中心としていることが明らかとなった。