著者
湯澤 賢
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.611-616, 2017-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
24

タイプIモジュラーポリケチド合成酵素(モジュラーPKS)は,極めて多様な構造の化合物を合成するという特性から,優れた“天然の化学工場”と言える.モジュラーPKSはアシルCoAを基質として利用するポリメラーゼであり,さまざまなアシルCoAを順次縮合することにより,一般にポリケチドと総称されるさまざまな化合物を合成する.最近,基質となるアシルCoAの種類がタンパク質合成におけるアミノ酸のそれに匹敵することが明らかになった.これら多様なアシルCoAを自在に縮合することができれば,合成しうる化合物の種類は天文学的な数になる.本稿では,その鍵となるモジュラーPKSの基質特異性のリプログラミングに関する最新の研究成果を概説する.
著者
大河内 信弘 湯澤 賢治 佐藤 英明 安江 博
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

移植医療の問題点の一つである移植臓器不足の解決法のひとつとして、豚、牛などの異種動物からヒトへ臓器を移植する異種移植が挙げられる。このドナー動物として豚が最も有望とされているが、細胞、臓器を問わずブタからヒトへの異種移植において、ヒトが生まれつき持っている抗異種反応性自然抗体、および補体によって引き起こされる超急性拒絶反応が大きな障壁となっている。これらの抗体や補体により引き起こされる超急性拒絶反応は不可逆的であり、移植された細胞や臓器は細胞死、または臓器不全となる。この超急性拒絶反応を抑制するためにはドナー側の異種抗原(galactose α-1,3-galactose)を消去または減少させることが必要不可欠である。そこで本研究では、昨年度は異種抗原をknock outするgene vectorの作成を試みたが、いずれのvectorも抗原の発現抑制には無効であった。今年度はこの細胞表面に存在する異種抗原を合成する転換酵素(α-1,3-galactosyltransferase)のアンチセンスRNAベクターを作成し、ブタ細胞への遺伝子導入を試みた。その結果、一過性発現ではあるが、ブタ細胞の異種抗原を減弱させられることが明らかになった。以上の結果より、遺伝子導入によりアンチセンスRNAを発現させα-1,3-galactosyltransferaseタンパクの翻訳を阻害する方法は、超急性拒絶反応を抑制する手段の一つとなることが示唆された。