著者
滝浦 真人
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-38, 2008-08-31 (Released:2017-05-01)
被引用文献数
2

"忌避関係対冗談関係","敬語対タメ語","ネガティブ・ポライトネス対ポジティブ・ポライトネス"という3組の二項対立の間には平行関係が存在し,後二者は語用論的な性質をもつ点で"忌避関係〜冗談関係"という人類学的な区分と異なっている.本論文では,その2つの二項対立について,語用論的相対性に焦点を当てながら論じる.第一に,対人的な〈距離〉の表現手段である敬語は,非敬語とともに,話し手からの共感度に応じて人間関係を描画する.話し手が関係をどう見なすかによって描かれる像は異なり,それゆえこの働きは社会言語学的ではなく語用論的なものである.第二に,敬語は談話上で,"表敬""品位保持""あらたまり""疎外"そして"親愛"といった多様な機能を果たし,ときには,同じ形式を使用しても,遠隔的/近接的という正反対の効果が生じることさえある.鍵を握るのは文脈的要因の働きであること,そして,敬語と非敬語の談話上の働きを捉えるには,意味機能と語用論的機能を関数的に結びつける枠組の構築が必要であることを主張する.
著者
滝浦 真人
巻号頁・発行日
2017-03-23

Hokkaido University(北海道大学). 博士(文学)