著者
松本 修一 滝澤 直歩 金山 泰成 宮井 仁毅 児玉 亘弘 松林 直
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.530-536, 2014-09-19 (Released:2014-10-06)
参考文献数
25

目的:腹水を伴う肝硬変患者における特発性細菌性腹膜炎のリスクファクター(特にPPIとのかかわり)につき検討した.方法:2006年1月から2011年10月までの期間に診断的腹水穿刺を行った肝硬変に伴う腹水症例157例を対象とした.腹水中好中球数250/mm3以上または腹水培養陽性となったものをSBPと診断した.背景因子および腹水穿刺時の血液検査所見から多変量解析を用いてSBPのリスクファクターを抽出した.結果:対象157例のうち38例をSBPと診断した.多変量解析でSBPの危険因子は,肝細胞癌(OR=5.09, 95% CI 2.09-13.05;p<0.01),MELDスコア(20以上,OR=3.57, 95% CI 1.40-9.69, p<0.01),PPI内服(OR=2.60, 95% CI 1.13-6.12;p=0.02)であった.結語:PPI内服は,肝細胞癌,MELDスコア高値とともにSBPの独立した危険因子であった.PPIは様々な理由で頻用されているが,腹水を有する肝硬変症例に対するPPI投与は慎重に行うべきであり,漫然とした投与は避けるべきである.