著者
松林 直
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.409-416, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
28

背景:低コルチゾール血症をきたすストレス関連疾患の身体症状(疲労,食欲不振,体重減少,過度の眠気,嘔気や下痢,関節痛や筋肉痛,めまい,微熱など)は低コルチゾール血症をきたす代表的な身体疾患である副腎皮質機能低下症と類似した症状がみられる. 方法と結果:長引く疲労を主訴に心療内科を受診した患者に副腎皮質機能低下症診断アルゴリズムに従い検査した.1/5の症例が中枢性副腎皮質機能低下症と診断し得た.これらの2/3はうつ病を併発し,1/3は何らかの心的外傷体験を有し,既往症に気管支喘息などのため外因性ステロイド使用歴が2/5にみられた. 結論:低コルチゾール血症を伴うストレス関連疾患を診療する際に自己免疫疾患やアレルギー疾患などの身体併存症と過去の外因性ステロイド使用歴に注目し,中枢性副腎皮質機能低下症の鑑別も念頭に置くことが肝要である.
著者
大島 彰 岡田 隆雄 玉井 一 松林 直 高橋 進 楊 思根 美根 和典 中川 哲也
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-65, 1990-01-08
被引用文献数
3

Acute gastric dilatation (AGD) is one of the life-threatening complications which needs accurate diagnosis and appropriate treatment as soon as possible, although it occurs rarely in anorexia nervosa. We have unexpectedly experienced a case of AGD in anorexia nervosa caused by superior mesenteric artery (SMA) syndrome during the early stage of the treatment. An 18-year-old senior highschool girl was admitted to our hospital because of anorexia nervosa without any episodes of bulimia or vomiting. About one year before admission, considering herself overweight she had started dieting and had reduced her weight from 60kg to 33.8kg. After admission, she started taking, 1,000kcal of food by herself in addition to 200kcal of elementary diet by the tube feeding. On the 2nd hospital day, a plain chest X-ray picture showed the left-sided pleural fluid because of the pulmonary tuberculosis. The chest drainage tube was inserted on the 6th hospital day, and she was forced to lie on the bed. On the 8th hospital day, she suddenly felt nauseous and vomited. A plain abdominal X-ray picture showed the sign of AGD. A barium X-ray study on the 11th hospital day proved that the AGD was caused by SMA syndrome, showing vertical cut off sign at the 3rd portion of the duodenum obstructed by the SMA and oral side duodenal loop and the stomach were dilated. She was treated conservatively, and barium meal examination, on the 46th hospital day, proved that the signs of SMA syndrome had disappeared. After the completion of our step-by-step treatment program on the basis of cognitive behavior therapy with anti-tuberculosis drugs, she was discharged at the weight of 46.7kg, and she has been in good condition since then.
著者
小牧 元 小林 伸行 松林 直 玉井 一 野崎 剛弘 瀧井 正人
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近年、ストレスに対する生態防御の観点から、免疫系と視床下部-下垂体-副腎系との関連が注目されてきた。特にサイトカインの一種であるインターロイキン‐1β(IL-1β)がこの免疫系と中枢神経系を仲介する、主要な免疫メディエーターの一つであることが明らかになっている。このIL-1βの同系に対する賦活作用には、視床下部の室傍核(PVN)におけるCRFニューロンの活動が促される必要があるが、血中のIL-1βがいかにして同ニューロンを刺激するのか未だ確定した結論には到っていない。我々は視床下部の終板器官(OVLT)が、その血中のIL-1βが作用する主なゲートの一つである可能性を、同部位にIL-1レセプター・アンタゴニストを前処置することにより確認したところ、血中IL-1β投与によるACTHの上昇は有意に抑制された。一方、一酸化窒素(NO)が脳内でニューロトランスミッターとして働いていることが判明し、特に、NOがアストロサイトからのPGE2産生やCRFやLHRH分泌調節に直接かかわっている可能性がある。そこで、マイクロダイアリシスを用いて、同部位のNO産生との関わりをさぐるために、L‐Arginineをチューブ内に流し、IL-1βによるPGE2産生の変化を見たところ、有意な抑制傾向は認めなかった。しかし、フローベの長さの問題、L‐Arginineの濃度の問題もあり、容量依存生の確認、他の部位との比較まで至っておらず、結論は現在まで至っていない。今後、容量、他のNO産生関連の薬物投与も試みて、確認して行く予定である。
著者
松林 直 広山 夏生 森田 哲也 東 豊 児島 達美 玉井 一 長門 宏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.519-524, 1996-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

原発性甲状腺機能低下症を伴ったACTH/LH欠損症の48歳の女性を経験した。患者は32歳時頃より、全身倦怠感、めまい、嘔気、不安感、悲哀感などを訴え、38歳時、当科関連N病院心療内科を受診し、不安、うつ状態を伴った自律神経失調症と診断された。夫婦関係が問題とされ、心理教育的アプローチが夫婦になされたが、症状の消失はなく、患者は頻回の入退院を繰り返した。平成5年、多彩な症状が持続していることから、内分泌疾患、特に下垂体疾患を疑い、関連検査を行ったところ、原発性甲状腺機能低下症を伴うACTH/LH欠損症が明らかとなり、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンの補償療法を行ったところ、症状の改善をみた。
著者
松本 修一 滝澤 直歩 金山 泰成 宮井 仁毅 児玉 亘弘 松林 直
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.530-536, 2014-09-19 (Released:2014-10-06)
参考文献数
25

目的:腹水を伴う肝硬変患者における特発性細菌性腹膜炎のリスクファクター(特にPPIとのかかわり)につき検討した.方法:2006年1月から2011年10月までの期間に診断的腹水穿刺を行った肝硬変に伴う腹水症例157例を対象とした.腹水中好中球数250/mm3以上または腹水培養陽性となったものをSBPと診断した.背景因子および腹水穿刺時の血液検査所見から多変量解析を用いてSBPのリスクファクターを抽出した.結果:対象157例のうち38例をSBPと診断した.多変量解析でSBPの危険因子は,肝細胞癌(OR=5.09, 95% CI 2.09-13.05;p<0.01),MELDスコア(20以上,OR=3.57, 95% CI 1.40-9.69, p<0.01),PPI内服(OR=2.60, 95% CI 1.13-6.12;p=0.02)であった.結語:PPI内服は,肝細胞癌,MELDスコア高値とともにSBPの独立した危険因子であった.PPIは様々な理由で頻用されているが,腹水を有する肝硬変症例に対するPPI投与は慎重に行うべきであり,漫然とした投与は避けるべきである.
著者
玉井 一 松林 直
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

甲状腺悪性リンパ腫と橋本病は密接な関係にあると言われているが、その治療や予後は異なっている。その発症要因を研究し、早期発見を行うことは重要である。1.甲状腺悪性リンパ腫とHLAとの関係 甲状腺悪性リンパ腫と診断した23例についてHLA class【I】抗原,class【II】抗原について検索したが、正常人の分布と有意差はなく、特定のHLA抗原と甲状腺悪性リンパ腫の関係は見いだせなかった。2.甲状腺悪性リンパ腫,橋本病とEpstein Brr Virus(EBV)関連抗体との関係。14例の甲状腺悪性リンパ腫と年鈴を一致された同数例の橋本病についてEBVCA,EBEA,EBNA抗体について検索した結果、両疾患の全例がEBVCA抗体の陽性を示したが、EBEA抗体,EBNA抗体の陽性は甲状腺悪性リンパ腫でそれぞれ5例,10例,橋本病での陽性はそれぞれ2例,6例であり、甲状腺悪性リンパ腫で有意にEBNA抗体価が高値を示した。(P<0.05)3.甲状腺悪性リンパ腫,橋本病でのM蛋白血症検出の意義。 初診時、橋本病と考えられた681例について、血清蛋白電気泳動を実施した。681例にはその後の吸引細胞診や針生検等で1例の甲状腺前リンパ腺と13例の甲状腺悪性リンパ腫を含むことが判明し、残りの667例を橋本病と診断した。M蛋白血症は橋本病5例(0.7%),甲状腺リンパ腺1例と、甲状腺悪性リンパ腫3例(23.1%)に認め、更に甲状腺内M蛋白の検索を行ったところ、後2者では甲状腺にその存在を認めたが、橋本病では認めず、甲状腺悪性リンパ腫にM蛋白血症を有意にその検出頻度が高く(P<0.001)、その起源が甲状腺であることを証明した。