著者
漆畑 貴久
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.57-79, 2008-04-30

本稿は、交通犯罪対策としての刑事立法の動向を、1946(昭和21)年以降における刑法及び道路交通法の改正を中心として、交通犯罪に対する厳罰化という流れに着目して概観し、その意義について考察することを目的とする。本稿において概観した刑法及び道路交通法の一連の改正に対しては、罰則の強化による犯罪の抑止に対する期待から、それぞれの厳罰化を支持・容認してきた国民の意識が存在したこととともに、その内容において、著しい罰則の強化自体に対する疑問、その効果に対する疑問、そして刑の不均衡という疑問などが指摘できることを明らかにする。このような立法が実現する背景には、犯罪を犯すものと犯さないものとの区分を志向する態度が存在することを示す。そしてこうした考察を通して、国民の意識を的確に把握しそれを反映させ、同時に、刑法の基本原理と刑罰制度の理念との調和に十分な配慮を払うという観点に立った慎重な立法態度が、実効性とバランスとを備えた交通犯罪対策の実現に繋がると考えられることを指摘する。
著者
漆畑 貴久 ウルシバタ タカヒサ Takahisa Urushibata
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.71-86, 2008-12-19

幇助行為の存否について判断する際に、裁判例においては、幇助行為をしたとされる者の主観面の評価が行われる。これは、定型性が穏やかで、その成立範囲が不明確になりがちな幇助犯の処罰範囲を明確化・厳格化することを意図するものであり、幇助犯の成否の判断においては重要な意義を有していると考えられる。本稿は、幇助行為の意味を整理し、幇助行為をしたとされる者の主鏡面について評価した近時の裁判例を概観し、そのうえで、その主鏡面が幇助行為の存否の判断にどのような影響を及ぼしているのかを検討することを目的とするものである。