著者
藤原 葉子 澤田 留美 脊山 洋右
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は市販の植物油脂の品種改良により、脂肪酸組成がオレイン酸を大量に含むようになった場合には、世界的に見ても理想的であると考えられる現在の日本人の脂肪酸の摂取バランスが変化する可能性があることから、多量のオレイン酸を摂取することによる栄養学的な影響と安全性を検討することを目的とした。14年度は、動物実験によるオレイン酸リッチ油の栄養学的な評価を行った。ハイオレイックひまわり油はオレイン酸を約80%とこれまでの植物油脂と比較して多量に含み、リノール酸は7.7%、リノレン酸は0.1%しか含んでいない。オレイン酸を多量に含むオレイン酸リッチ型の油脂を摂取しても、リノール酸によるコレステロール低下作用や、プロスタグランジン合成に関わるアラキドン酸合成量には大きな変化はないものと考えられた。15年度にはリポ蛋白プロファイルがラットよりもヒトに近いモルモットにハイオレイックタイプ油を投与して同様な実験を行った。オレイン酸が多くてもHDLコレステロールの増加はほとんど見られなかったが、抹消組織からコレステロールを引き抜き肝臓へ逆転送する働きを持つ、LCAT活性の増加傾向が認められたが、ラットと同様に大きな変化は認められなかった。また、成人女性14名に一日10gのハイオレイックひまわり油を4週間摂取させ、血中脂質とLDL抗酸化能を測定しオレイン酸リッチ油摂取による影響を検討した。試験前に比べて4週間のオレイン酸リッチタイプの油を摂取した後では、血中コレステロール、血中TGおよびHDLコレステロールはほとんど差が認められなかったが。血漿から調製したLDLの抗酸化能を共役ジエン形成までのラグタイムで比較したところ、ハイオレイックひまわり油摂取後には有意に抗酸化能が高かった。ハイオレイックひまわり油の摂取を止めて2週間後に再度測定したところ、LDL抗酸化能は元のレベルに戻った。オレイン酸を多く含む油の摂取によるHDLコレステロールの増加作用は、日本人では欧米ほどはっきりと見られなかったが、血中LDLの抗酸化能が上がることで、長期摂取を続けると抗動脈硬化作用を持つ可能性があると考えられた。今回の結果からは、必須脂肪酸としてのリノール酸やリノレン酸の必要量はわずかであるので、オレイン酸を多量に摂取しても大きな影響は認められなかったが、さらに長期的な効果やPUFAに特有な生理作用についてはさらに検討する必要がある。