著者
藤原 葉子 秋元 浩二 二宮 伸二 坂口 靖江 脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.221-228, 2003-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

ビタミンC (アスコルビン酸), L-システインおよびビタミンE (コハク酸d-α-トコフェロール) の併用による色素沈着抑制効果を, 褐色モルモットに経口摂取して検討した。背部を除毛後, 紫外線 (UV-B) を照射した褐色モルモットの皮膚色はメラニン色素の沈着によりL*値 (明度) が低下したが, ビタミンC単独摂取ではL*値の上昇傾向を示し, ビタミンCとL-システインの併用またはビタミンC, L-システインとビタミンEを併用することにより, 紫外線照射によるL*値の低下はいずれも有意に抑制された。紫外線照射部の表皮ではDOPA反応陽性のメラノサイト数が増加したが, ビタミンCとL-システインの併用またはビタミンC, L-システインとビタミンEの併用では, 対照群に比べて有意に減少した。L*値の低下抑制効果およびDOPA反応陽性メラノサイト数増加の抑制効果の程度は, いずれも (ビタミンC+L-システイン+ビタミンE群)>(ビタミンC+L-システイン群)>ビタミンC群であった。以上の結果から, ビタミンやシステインを組み合わせることによって, 経口摂取によってもUV照射によるメラニンの沈着を抑制できることがわかった。
著者
脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1690-1699, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
32

質量分析計は物質の構造解析を目的として発展してきた。ガスクロマトグラフと組み合わせたGC/MSは混合物にも適用できるので生体試料中の微量成分の分析にも向いている。さらに特定質量数のイオンだけを選択的にモニターするマスフラグメントグラフィーという手法を用いると定量分析も可能になる。モルモットのハーダー腺の脂質は50種類にもおよぶ脂肪酸を含んでいて,しかも分枝構造があるので分析にはGC/MSが威力を発揮する。その結果,この腺の分泌脂質である1-O-アルキル-2,3-O-ジアシルグリセロールの構造を明らかにすることができ,かつ分枝脂肪酸が多量に存在することがわかった。マスフラグメントグラフィーを応用し新しい脂肪酸合成酵素活性の測定法を開発してこの腺の酵素を分析したところ,ほかの臓器の酵素と違って分枝脂肪酸を容易に生成できること,生成脂肪酸種は基質レベルで調節されていることなどが明らかになった。これらの分析法は血清中のコレスタノールや胆汁酸の定量にも応用でき,CTXという先天性脂質代謝異常症の診断にも役だっている。本稿は脂肪酸の構造解析とその代謝を例にGC/MSの医学への応用にも言及しようとするものである。
著者
石原 健吾 髙石 鉄雄 伊藤 廉子 澤田 祐子 辻 沙奈恵 森友 理絵 脊山 洋右
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.71-77, 2012-02-15 (Released:2013-09-30)
参考文献数
8

This study compares the physiological work load between two ascending patterns, single-step (SS) and double-step (DS), when climbing a public staircase at the two different climbing rates, controlled speed (105steps/min) and free speed. The SS pattern involved climbing one step at a time, while the DS pattern involved climbing two steps in a single stride. Thirteen female subjects climbed a typical 7-storey building, giving a total of 168 steps and vertical movement of 27.7 m. The results for perceived exertion (RPE), blood lactate level, oxygen consumption and muscle EMG activity were significantly higher (p < 0.05) with the DS than SS pattern at a controlled speed. The results also showed that the ascending speed, heart rate, blood lactate level, respiratory quotient (RQ) and RPE were significantly higher (p < 0.05) with the DS than SS pattern at a free speed. These results clearly indicate the higher physical workload involved with the DS than SS pattern at both free and controlled speeds.
著者
藤原 葉子 澤田 留美 脊山 洋右
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は市販の植物油脂の品種改良により、脂肪酸組成がオレイン酸を大量に含むようになった場合には、世界的に見ても理想的であると考えられる現在の日本人の脂肪酸の摂取バランスが変化する可能性があることから、多量のオレイン酸を摂取することによる栄養学的な影響と安全性を検討することを目的とした。14年度は、動物実験によるオレイン酸リッチ油の栄養学的な評価を行った。ハイオレイックひまわり油はオレイン酸を約80%とこれまでの植物油脂と比較して多量に含み、リノール酸は7.7%、リノレン酸は0.1%しか含んでいない。オレイン酸を多量に含むオレイン酸リッチ型の油脂を摂取しても、リノール酸によるコレステロール低下作用や、プロスタグランジン合成に関わるアラキドン酸合成量には大きな変化はないものと考えられた。15年度にはリポ蛋白プロファイルがラットよりもヒトに近いモルモットにハイオレイックタイプ油を投与して同様な実験を行った。オレイン酸が多くてもHDLコレステロールの増加はほとんど見られなかったが、抹消組織からコレステロールを引き抜き肝臓へ逆転送する働きを持つ、LCAT活性の増加傾向が認められたが、ラットと同様に大きな変化は認められなかった。また、成人女性14名に一日10gのハイオレイックひまわり油を4週間摂取させ、血中脂質とLDL抗酸化能を測定しオレイン酸リッチ油摂取による影響を検討した。試験前に比べて4週間のオレイン酸リッチタイプの油を摂取した後では、血中コレステロール、血中TGおよびHDLコレステロールはほとんど差が認められなかったが。血漿から調製したLDLの抗酸化能を共役ジエン形成までのラグタイムで比較したところ、ハイオレイックひまわり油摂取後には有意に抗酸化能が高かった。ハイオレイックひまわり油の摂取を止めて2週間後に再度測定したところ、LDL抗酸化能は元のレベルに戻った。オレイン酸を多く含む油の摂取によるHDLコレステロールの増加作用は、日本人では欧米ほどはっきりと見られなかったが、血中LDLの抗酸化能が上がることで、長期摂取を続けると抗動脈硬化作用を持つ可能性があると考えられた。今回の結果からは、必須脂肪酸としてのリノール酸やリノレン酸の必要量はわずかであるので、オレイン酸を多量に摂取しても大きな影響は認められなかったが、さらに長期的な効果やPUFAに特有な生理作用についてはさらに検討する必要がある。
著者
脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.321-328, 1999-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
35

Cholestanol resembles cholesterol, but its significance has remained unclear because of its low concentration in the body. However, in cerebrotendinous xanthomatosis, a genetic disorder of cholesterol metabolism, deposition of cholestanol produces several pathological conditions such as tendon xanthomas, cerebellar ataxia, pyramidal signs, cataracts and dementia. We have been investigating this disease for 23 years from the viewpoint of biochemical diagnosis. We established a procedure for quantification of cholestanol by HPLC, and also an assay method for sterol 27-hydroxylase. We also found several mutations of the CYP 27 gene in 10 CTX families. Furthermore, we established experimental animals with CTX by feeding then a cholestanol diet, and produced corneal dystrophy and gallstones in mice, and apoptosis of cerebellar neuronal cells from rats. CTX can be treated with chenodeoxycholic acid, which reduces the cholestanol concentration in serum. These findings suggest that cholestanol has a toxic effect. It will be necessary to determine the cholestanol content of food for the treatment of CTX patients and to prevent the clinical manifestations produced by cholestanol administration.