著者
松田 涼 世古 俊明 隈元 庸夫 佐藤 佑太郎 濱本 龍哉 吉田 英樹
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2024-001, (Released:2023-08-18)
参考文献数
26

【目的】脳卒中者の等尺性脚伸展筋力(以下,脚伸展筋力)と等尺性膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力)と歩行自立度との関連を検討し,重度の麻痺を呈する脳卒中者への下肢筋力評価の一助を得ること。【方法】対象は脚伸展筋力と膝伸展筋力測定が可能な初発の脳卒中者51名とした。筋力測定には牽引式徒手筋力計を使用し,脚伸展筋力測定は背もたれ付きの椅子に深く腰掛けた座位とし,測定下肢を前方に置いた椅子の座面に挙上させ,膝関節屈曲30度位にて施行した。なお,膝伸展筋力測定はベルト固定法にて実施した。歩行自立度評価にはFunctional Ambulation Category(以下,FAC)を用いた。脚伸展筋力と膝伸展筋力の関連および麻痺の重症度を制御変数としたFACと各筋力値の偏相関分析を実施した。【結果】脚伸展筋力と膝伸展筋力は高い正の相関を認め,偏相関分析にて麻痺側脚伸展筋力および膝伸展筋力がFACと中等度の正の相関を認めた。【結論】脳卒中者の脚伸展筋力は膝伸展筋力と同程度に歩行自立度を反映することが明らかとなった。
著者
松田 涼 隈元 庸夫 世古 俊明 三浦 紗世 濱本 龍哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0316, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに】近年,非特異的腰痛に対する運動療法として,立位での体幹伸展運動が推奨される。しかし,運動時における腰背筋群の生理的変化を検討した報告は少なく,その運動効果の機序は明確ではない。本研究の目的は,体幹伸展運動時の腰部脊柱起立筋(腰背筋)と腰部多裂筋(多裂筋)の血液循環動態と筋活動について検討し,腰痛に対する理学療法の科学的根拠に一助を得ることである。【方法】対象は健常成人男性13名(年齢22.0±3.0歳,身長170.0±5.1 cm,体重62.4±6.9 kg)とした。課題運動は体幹伸展運動とし,測定肢位は両手を両腸骨稜後面に位置した立位と座位とした。測定条件は,仙骨に対する腰椎の角度を電気角度計(ノルアングル,Noraxon社製)で計測し,座位では0°,10°,最大伸展(max)の3条件,立位では0°,10°,20°,maxの4条件として,それぞれ10秒間保持させた。座位と立位の各測定条件における腰背筋と多裂筋の血液循環動態は,近赤外線分光法(NIRS,Dyna Sense社製)を用いて,酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb)を計測し,平均値を算出した。また腰背筋と多裂筋の筋活動量は表面筋電計(TeleMyo2400,Noraxon社製)を用いて計測し,各測定条件での積分筋電値を最大等尺性収縮時の筋電値で正規化し%MVCを算出した。なお,血液循環動態および筋活動量は,後半5秒の値を採用した。左腰部で筋活動量,右腰部で血液循環動態を同期測定した。検討項目は座位と立位における測定条件間での血液循環動態(oxy,deoxy,total-Hb),筋活動量(腰背筋,多裂筋)の多重比較とし,Holmの方法を用いて検討した。なお有意水準は5%とした。【結果】座位での腰背筋のoxy-Hbはmaxが他より,10°が0°より高値を示し,total-Hbはmaxが0°より高値を示した。deoxy-Hbは差を認めなかった。座位での多裂筋のoxy-Hbとtotal-Hbはmaxが他より高値を示し,deoxy-Hbでは差を認めなかった。立位での腰背筋のoxy-Hbは20°とmaxが0°より高値を示し,deoxy,total-Hbは差を認めなかった。立位での多裂筋のoxy,deoxy,total-Hbは差を認めなかった。座位と立位の筋活動量は腰背筋,多裂筋ともに差を認めなかった。座位における腰背筋の筋活動量は1~16%MVC,多裂筋の筋活動量は1~12%MVCの値であった。立位における腰背筋の筋活動量は0.9~14%MVC,多裂筋の筋活動量は1~16%MVCの値であった。【結論】体幹伸展運動は腰背筋群の高い筋活動を伴わず,立位では腰背筋,座位では腰背筋と多裂筋の血中oxy-Hbの増大を期待できることが示唆された。よって,座位は立位よりも多裂筋を含めた疼痛緩和を望める可能性が考えられた。今後は腰痛症者を対象とした検討が必要である。