著者
松田 涼 隈元 庸夫 世古 俊明 三浦 紗世 濱本 龍哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0316, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに】近年,非特異的腰痛に対する運動療法として,立位での体幹伸展運動が推奨される。しかし,運動時における腰背筋群の生理的変化を検討した報告は少なく,その運動効果の機序は明確ではない。本研究の目的は,体幹伸展運動時の腰部脊柱起立筋(腰背筋)と腰部多裂筋(多裂筋)の血液循環動態と筋活動について検討し,腰痛に対する理学療法の科学的根拠に一助を得ることである。【方法】対象は健常成人男性13名(年齢22.0±3.0歳,身長170.0±5.1 cm,体重62.4±6.9 kg)とした。課題運動は体幹伸展運動とし,測定肢位は両手を両腸骨稜後面に位置した立位と座位とした。測定条件は,仙骨に対する腰椎の角度を電気角度計(ノルアングル,Noraxon社製)で計測し,座位では0°,10°,最大伸展(max)の3条件,立位では0°,10°,20°,maxの4条件として,それぞれ10秒間保持させた。座位と立位の各測定条件における腰背筋と多裂筋の血液循環動態は,近赤外線分光法(NIRS,Dyna Sense社製)を用いて,酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb)を計測し,平均値を算出した。また腰背筋と多裂筋の筋活動量は表面筋電計(TeleMyo2400,Noraxon社製)を用いて計測し,各測定条件での積分筋電値を最大等尺性収縮時の筋電値で正規化し%MVCを算出した。なお,血液循環動態および筋活動量は,後半5秒の値を採用した。左腰部で筋活動量,右腰部で血液循環動態を同期測定した。検討項目は座位と立位における測定条件間での血液循環動態(oxy,deoxy,total-Hb),筋活動量(腰背筋,多裂筋)の多重比較とし,Holmの方法を用いて検討した。なお有意水準は5%とした。【結果】座位での腰背筋のoxy-Hbはmaxが他より,10°が0°より高値を示し,total-Hbはmaxが0°より高値を示した。deoxy-Hbは差を認めなかった。座位での多裂筋のoxy-Hbとtotal-Hbはmaxが他より高値を示し,deoxy-Hbでは差を認めなかった。立位での腰背筋のoxy-Hbは20°とmaxが0°より高値を示し,deoxy,total-Hbは差を認めなかった。立位での多裂筋のoxy,deoxy,total-Hbは差を認めなかった。座位と立位の筋活動量は腰背筋,多裂筋ともに差を認めなかった。座位における腰背筋の筋活動量は1~16%MVC,多裂筋の筋活動量は1~12%MVCの値であった。立位における腰背筋の筋活動量は0.9~14%MVC,多裂筋の筋活動量は1~16%MVCの値であった。【結論】体幹伸展運動は腰背筋群の高い筋活動を伴わず,立位では腰背筋,座位では腰背筋と多裂筋の血中oxy-Hbの増大を期待できることが示唆された。よって,座位は立位よりも多裂筋を含めた疼痛緩和を望める可能性が考えられた。今後は腰痛症者を対象とした検討が必要である。
著者
世古 俊明 隈元 庸夫 小川 峻一 伊藤 俊輔 三浦 紗世 松田 涼 信太 雅洋 伊藤 俊一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.551-554, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕徒手筋力計で得られた膝伸展筋力に関して,下腿長による補正の必要性を検討した.〔対象と方法〕中高齢者の地域一般住民108名(男性21名,女性87名)を対象とした.測定項目は膝伸展筋力,最大歩行速度,起立テスト,2ステップテストとした.膝伸展筋力は筋力値体重比(N/kg)とトルク値体重比(Nm/kg)を算出し,両者の再現性と相関および,パフォーマンス能力との関連を性別で検討した.〔結果〕男女ともに筋力値体重比とトルク値体重比は,高い再現性と相関を認めた.また男女における両測定値は,各パフォーマンステストとの相関関係に乖離を認めなかった.〔結語〕中高齢者に対する徒手筋力計での膝伸展筋力測定は,下腿長の影響を受けづらく,測定値の用途に留意しながら非補正値での検討が可能と思われる.
著者
高橋 由依 隈元 庸夫 世古 俊明 三浦 紗世 工藤 夢子 松田 由衣 永井 孝尚 橘田 岳也 大内 みふか 篠原 信雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11682, (Released:2020-05-20)
参考文献数
36

【目的】本研究の目的は,腹圧上昇肢位が骨盤底筋と体幹・下肢筋群の共同収縮に及ぼす影響を検討することである。【方法】若年未経産婦15 名(平均年齢25.5 ± 2.5 歳)を対象とし,肢位要因(背臥位,立位,中腰位,中腰位で重量物を挙上した肢位(重錘挙上位))と課題要因(安静時,骨盤底筋収縮時)の2 要因での腟圧値と筋活動量(腹直筋,外・内腹斜筋,多裂筋,大殿筋,股内転筋)の比較と,各肢位間で骨盤底筋収縮時における被験筋筋活動増加率について比較検討した。【結果】課題要因では骨盤底筋収縮時に腟圧値と各筋活動量が有意に高値を示し,肢位要因では中腰位と重錘挙上位で腟圧値と各筋活動量が有意に高値を示した。筋活動増加率は内腹斜筋が背臥位,立位,中腰位で他筋よりも有意に高値を示した。【結論】内腹斜筋は他筋と比較して,中腰位,背臥位,立位において骨盤底筋との共同収縮筋としての活動が増加することが示唆された。