著者
稲田 竜太 井上 裕貴 安浦 優佳 出水 精次
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-33, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
30

【目的】膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:以下,ACL)再建術後症例におけるSingle leg hop(以下,SLH)の性別・年代別の基準値を検討すること。【方法】ACL再建術を施行した687症例を対象とした。スポーツ復帰時のACL非損傷側(以下,健側)と再建側(以下,患側)のSLHの跳躍距離と身長で正規化した値(以下,身長比)を調査し,性別・年代別(10代 20代 30代 40代 50代)の平均値 ± 標準偏差をカルテより後ろ向きに調査した。また,男女別に年代毎のSLH基準値の違いも検討した。【結果】SLHの跳躍距離と身長比の健側および患側の性別・年代別の基準値が明らかとなった。年代別のSLH基準値は,男女ともに10代 20代で高値であり,30代 40代 50代にかけて小さくなる傾向にあった。【結論】SLHの性別・年代別基準値が明らかとなり,健患比評価が困難な両側ACL同時再建症例や反対側ACL損傷症例に対しての指標になると考える。
著者
工藤 和輝 二階堂 泰隆 浦上 英之 佐浦 隆一
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2023-002, (Released:2023-01-17)
参考文献数
38

【はじめに】脳卒中後の姿勢定位障害の1つであるLateropulsion(以下,LP)は,主に前庭機能の障害が関与するとされている。今回LPを認めた症例に対し,前庭リハビリテーションとして,対象者自身が頭部と眼球の運動を行うGaze Stability Exercise(以下,GSE)を試みた。【症例紹介】脳梗塞(左視床・左中脳赤核近傍)を発症した80歳代女性である。初期(発症3–5日目)にはめまい症状があり,Head Impulse Test(以下,HIT)が陽性であった。身体症状としては,右側へのLPを認め(重心動揺計で測定した開脚立位時の左右荷重比[開眼:左38%/右62%,閉眼:左36%/右64%]),Functional Gait Assessment(以下,FGA)は11点と歩行中の動的バランスの低下を認めた。病巣部位と評価結果から,前庭感覚の上行路の損傷による前庭機能の障害が原因と考え,GSEを3日間実施した。【結果】最終(発症11日目)にはめまいが軽減し,HITは陰性となった。さらに,開眼時のみLPが消失し(開眼:左46%/右54%,閉眼:左35%/右65%),FGAスコアが21点と歩行中の動的バランスも改善した。【まとめ】脳卒中後のLPやめまい,動的バランスに対して,GSEが有効である可能性が示唆された。
著者
松田 涼 世古 俊明 隈元 庸夫 佐藤 佑太郎 濱本 龍哉 吉田 英樹
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2024-001, (Released:2023-08-18)
参考文献数
26

【目的】脳卒中者の等尺性脚伸展筋力(以下,脚伸展筋力)と等尺性膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力)と歩行自立度との関連を検討し,重度の麻痺を呈する脳卒中者への下肢筋力評価の一助を得ること。【方法】対象は脚伸展筋力と膝伸展筋力測定が可能な初発の脳卒中者51名とした。筋力測定には牽引式徒手筋力計を使用し,脚伸展筋力測定は背もたれ付きの椅子に深く腰掛けた座位とし,測定下肢を前方に置いた椅子の座面に挙上させ,膝関節屈曲30度位にて施行した。なお,膝伸展筋力測定はベルト固定法にて実施した。歩行自立度評価にはFunctional Ambulation Category(以下,FAC)を用いた。脚伸展筋力と膝伸展筋力の関連および麻痺の重症度を制御変数としたFACと各筋力値の偏相関分析を実施した。【結果】脚伸展筋力と膝伸展筋力は高い正の相関を認め,偏相関分析にて麻痺側脚伸展筋力および膝伸展筋力がFACと中等度の正の相関を認めた。【結論】脳卒中者の脚伸展筋力は膝伸展筋力と同程度に歩行自立度を反映することが明らかとなった。
著者
横山 広樹 玉置 昌孝 竹林 崇
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2021-002, (Released:2021-12-23)
参考文献数
20

【目的】胸椎化膿性椎間板炎に対する脊椎固定術後の脊髄性運動失調を呈した症例に対して,歩行機能の改善を目的とした振動刺激療法を運動療法と併用した結果,改善を認めたため報告する。【方法】運動療法に併用して下肢に対して振動刺激療法を用いる介入期間を設けた。筋力強化練習や動作練習を中心とした運動療法を34日間実施した後に,振動刺激療法を追加して14日間実施した。そして,Walking Index for Spinal Cord Injury II(以下,WISCI II)を用いて歩行機能を評価した。【結果】WISCI IIは13点から16点へと改善し,自宅内移動動作の獲得や屋外歩行手段の獲得につながった。【結論】脊髄障害を伴った歩行障害に対して振動刺激療法を用いた介入が歩行機能の改善の一助となる可能性がある。
著者
堀口 怜志 井尻 朋人 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-16, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
37

【目的】整形外科術後患者に対するリハビリテーションを実施する上で,筋緊張異常への評価・治療が必要となる。近年,臨床において簡易に骨格筋や軟部組織の評価として超音波測定装置が多く用いられており,筋活動を測定することも提案されている。本研究の目的は,超音波測定装置を用いた筋束長評価によって,低強度の筋活動が評価可能か否かを明らかにすることとした。【方法】対象は,健常者9名16肢とした。課題は最大随意収縮の30%以下の等尺性膝関節伸展課題とし,表面筋電計と超音波測定装置を用い筋電図積分値相対値と筋束長変化量相対値を同時測定し,曲線回帰分析を用いて筋束長と筋活動量の関係性を求めた。【結果】曲線回帰分析の結果はr2 = 0.736(p < 0.001)であり,筋電図積分値相対値が増加するほど筋束長変化量相対値が増加することが強く示唆された。【結論】外側広筋に対する低強度の筋活動の評価として,超音波測定による筋束長評価を用いることができる可能性が示唆された。
著者
堀田 昂己 三井 完太 岩下 太樹 岡田 遼人 岩坂 桃果 阪本 大地 内藤 秀太 畑中 良紀 原田 良也 松本 実夏 吉岡 雄馬 福本 悠樹 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-24, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
31

【目的】運動イメージ戦略の違いが脊髄神経機能の興奮性と運動の正確さに及ぼす影響について検討した。【方法】対象は,健常者13名(平均年齢20.3 ± 0.5歳)とした。安静時にF波を測定し,ピンチ力を50%MVCに調節する練習を与えた後,ピンチ課題において規定値と実測値との誤差を算出した。その後,順不同でそれぞれ別日に筋感覚的イメージ,1人称的視覚イメージ中のF波を測定した後,再度ピンチ課題を与えた。【結果】安静を基準とした各イメージ戦略間における振幅F/M比増加量に差異を認めなかった。また,安静を基準とした各イメージ戦略間における50%MVCからの絶対誤差改善度に差異を認めなかった。【結論】1人称的視覚イメージが1人称の視点に立って運動イメージを行うという点において筋感覚的イメージと類似したことで,同程度の脊髄神経機能の興奮性増大をもたらし,運動の正確さを維持させた。
著者
掛谷 佳昭 山本 洋司 渡辺 広希 惠飛須 俊彦
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-16, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
34

【目的】レンズ核線条体動脈(lenticulostriate artery:以下,LSA)領域のBranch Atheromatous Disease(BAD)患者に対する発症24時間以内の離床が運動機能および進行性脳梗塞に及ぼす影響について後方視的に検討すること。【方法】対象は2014年から2018年に当院へ入院したLSA領域のBAD患者とし,早期群と通常群の2群に分けた。年齢,性別,BMI,脳卒中危険因子,脳卒中既往歴,発症前modified Rankin Scale(mRS),入院時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),発症から立位開始までの時間,入院時および転帰時の下肢Fugl-Meyer Assessment(FMA),転帰時Barthel Index(BI),転帰時Functional Ambulation Categories(FAC),進行性脳梗塞の有無,進行性脳梗塞例の離床前後の収縮期血圧,リハビリ実施時間,実施回数について調査した。【結果】早期群17名,通常群13名であった。転帰時の下肢FMAは入院時と比較して両群共に有意に高値であった。BIは両群間に有意差を認めなかったが,自力歩行獲得例は通常群と比較し早期群で有意に多かった。進行性脳梗塞は両群間で有意差を認めなかった。【結論】LSA領域のBAD患者に対する発症24時間以内の離床は,安全かつ運動機能,歩行能力向上に繋がる可能性が示唆された。今後は研究デザインやサンプルサイズを考慮したさらなる研究の実施が必要になる。