著者
大村 敏昭 濱津 友紀 高橋 豊美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.584-593, 2005-07-15
被引用文献数
5 8

北海道太平洋沖(水深300〜1,000m)で7〜8月にキチジとベントスを採集した。空胃率からみて, 夏季はキチジの摂餌が活発な時期であると判断された。食物組成は水域や水深帯により大きく変化していたが, 成長に伴ってヨコエビ類・クーマ類から十脚甲殻類, クモヒトデ類へと向かう食性の変化が認められた。キチジは多様な餌を摂食していたが, 成長とともに豊富に存在するクモヒトデ類(主に小型種のホソクシノハクモヒトデ)への捕食割合を高める結果, 餌をめぐる強い種内・種間競争が回避されている可能性があると推察された。
著者
大村 敏昭 濱津 友紀 山内 務巨 高橋 豊美
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.430-439, 2006-05-15
被引用文献数
5 5

夏季の北海道太平洋沖陸棚斜面のキチジ小型魚は主にヨコエビ類が高密度で生息する襟裳岬東沖水深 550~750 m に,中型魚は調査海域の中ではフタトゲエビジャコの密度が高い浅い水深帯に集中していた。大型魚は調査海域に広く分散しており,この行動は餌をめぐる種内・種間関係を軽減させ,餌を効率よく獲得する戦略であることが示唆された。深い水深帯ほど肥満度 K と肝臓重量指数 HSI が低かったのは,主要餌種の栄養価の違いに起因すると考えられた。中型魚の K と HSI が低かったのは,体長増加の急な時期であるためと推察された。