著者
濱田(佐々木) 幸恵
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.883, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
5

記憶には,ものを覚えること(記銘),覚えていること(保持),覚えていることを想い出す(想起)という過程がある.記銘には,訓練によって何かを習得するという学習と内容的には同じであるが,感覚情報を知覚し,固定して,記憶痕跡とする過程が含まれる.最近では,記憶を情報処理的な観点から取り扱うことが行われており,記銘をコード化,保持を貯蔵,想起を探索と呼んでいる.これまでの研究では,それぞれの記憶過程で個別の神経回路単位が対応しているのか,また記憶を探索して想起するとき海馬以外の領域が関わるかについて実験的に明確になっていない.本稿では,Rajasethupathyらによって報告された,記憶想起に関わる前頭前皮質から海馬への投射経路の役割について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Rajasethupathy P. et al., Nature, 526, 653-659 (2015).2) Frankland P. W., Bontempi B., Nature Rev. Neurosci., 6, 119-130 (2005).3) Ressler K. J., Mayberg H. S., Nature Neurosci., 10, 1116-1124 (2007).4) Taylor S. F. et al., Biol. Psychiatry., 71, 136-145 (2012).5) Wilson S. J. et al., Nature Neurosci., 7, 211-214 (2004).