著者
今村 圭介 岩村 きらら 若森 大悟 宮﨑 捷世 濵野 良安 範 静 沈 璐
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.40-55, 2023-03-31 (Released:2023-04-08)
参考文献数
53

本稿は,ミクロネシア地域の南洋諸島の主要8言語における日本語起源借用語(JOL)の比較考察を行うものである.これまでの当該地域のJOLの研究は個別で行われることが多く,比較研究がほとんど行われてこなかった.そのため,JOL数など各言語における日本語の影響の違いが,どのような要因によって形成されたのか,明らかでないことが多い.本稿において各地域の詳細な社会的・歴史的・言語的背景とともに,JOL全体の数及び意味分野ごとの数の違いを考察することによって,各地域における言語的影響及び日本統治の影響の検証を試みた.その結果,次のことが明らかになった.1)各言語におけるJOL全体の数の違いは「日本人との交流の密度」,「接触前の文化的距離」,「文化的同化への志向」,「日本語使用の威信」の違いによって形成されると考えられる.2)取り入れられたJOL数は意味分野によって明確な差が存在し,それらは現在まで残る日本統治の現地人への影響の違いを表している.