著者
福元 恵 山城 亘央 小林 史和 長坂 高村 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.239-242, 2013-03-01 (Released:2013-03-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

症例は49歳男性である.数日の経過で進行する四肢脱力により歩行できなくなったため,当院に緊急搬送された.脱力発作の既往歴や家族歴はなかった.血清カリウムが1.9mEq/lと低下しており,低カリウム血性ミオパチーと診断した.経口的にカリウム補充をおこなったところ,血清カリウム値,症状ともにすみやかに改善し,治療中止後も再発はなかった.カリウム代謝に関連した内分泌学的異常はみとめず,患者は,去痰目的に市販の総合感冒薬を10年間連日服用し,肥満解消目的に,症状出現2週間程前より緑茶抽出物健康飲料を大量摂取していたことから,これらにふくまれるカフェインの大量摂取が低カリウム血症の原因であると考えられた.
著者
瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1009-1011, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
7
被引用文献数
3

遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia; HSP)は下肢の痙縮と筋力低下を呈する神経変性疾患群である.現時点でSPG1~72の遺伝子座と60を超す原因遺伝子が同定されているが,全国多施設共同研究体制であるJapan Spastic Paraplegia Research Consortium(JASPAC)により,本邦HSPの分子疫学が明らかになってきた.さらに,JASPACにより,はじめてC12orf65遺伝子変異やLYST遺伝子変異がHSPの表現型を呈することが判明した.今後,JASPACの活動がHSPの更なる新規原因遺伝子の同定,分子病態の解明,そして根本的治療法の開発へと繋がることが望まれる.
著者
高木 隆助 埴原 光人 名取 高広 土屋 舞 木内 博之 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001611, (Released:2021-10-16)
参考文献数
21

症例は63歳男性.2011年クリプトコッカス脳室炎で入院,約1年間の治療で症状は改善した.数年後に左側脳室下角に限局した非交通性水頭症による近時記憶障害の悪化を認め,2019年に左側脳室下角へ脳室腹腔シャント術(ventriculoperitoneal shunt,以下VPSと略記)を行った.2020年に両側側脳室前角の拡大による排尿障害と歩行障害の悪化を認めたため,右側脳室前角へVPSを施行し,症状の改善を認めた.脳室炎後の多発性隔壁形成のため,慢性期に水頭症を生じた成人例はきわめて稀である.本例では,多房性の水頭症により脳室の一部が特に拡大し,その部位に応じた症候が出現することが示唆された.
著者
山城 亘央 長坂 高村 高木 隆助 三輪 道然 新藤 和雅 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.81-86, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は54歳の男性である.2010年12月歩行障害を発症し,2011年2月には記銘力低下も出現した.頭部MRIにて脳室周囲のT2高信号と脳室壁,脈絡叢の造影効果をみとめた.髄液は細胞数・蛋白上昇,糖低下をみとめ,クリプトコッカス抗原陽性から,クリプトコッカス脳室炎と診断した.リポゾーマル・アムホテリシンB,フルコナゾールにて治療を開始したが,副作用が出現したためボリコナゾール,フルシトシン,イトラコナゾールに変更した.本症例では頭部MRIにおける側脳室後角の隔壁形成をみとめ,脳室炎診断の一助となった.クリプトコッカス髄膜脳炎においてはまれながら脳室炎で発症するものがあることに留意すべきである.