著者
高木 隆助 埴原 光人 名取 高広 土屋 舞 木内 博之 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001611, (Released:2021-10-16)
参考文献数
21

症例は63歳男性.2011年クリプトコッカス脳室炎で入院,約1年間の治療で症状は改善した.数年後に左側脳室下角に限局した非交通性水頭症による近時記憶障害の悪化を認め,2019年に左側脳室下角へ脳室腹腔シャント術(ventriculoperitoneal shunt,以下VPSと略記)を行った.2020年に両側側脳室前角の拡大による排尿障害と歩行障害の悪化を認めたため,右側脳室前角へVPSを施行し,症状の改善を認めた.脳室炎後の多発性隔壁形成のため,慢性期に水頭症を生じた成人例はきわめて稀である.本例では,多房性の水頭症により脳室の一部が特に拡大し,その部位に応じた症候が出現することが示唆された.
著者
山城 亘央 長坂 高村 高木 隆助 三輪 道然 新藤 和雅 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.81-86, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は54歳の男性である.2010年12月歩行障害を発症し,2011年2月には記銘力低下も出現した.頭部MRIにて脳室周囲のT2高信号と脳室壁,脈絡叢の造影効果をみとめた.髄液は細胞数・蛋白上昇,糖低下をみとめ,クリプトコッカス抗原陽性から,クリプトコッカス脳室炎と診断した.リポゾーマル・アムホテリシンB,フルコナゾールにて治療を開始したが,副作用が出現したためボリコナゾール,フルシトシン,イトラコナゾールに変更した.本症例では頭部MRIにおける側脳室後角の隔壁形成をみとめ,脳室炎診断の一助となった.クリプトコッカス髄膜脳炎においてはまれながら脳室炎で発症するものがあることに留意すべきである.