著者
新津 洋司郎 佐藤 康史 瀧本 理修 加藤 淳二
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

組織線維症は現在全く治療法のない病態である。その責任細胞は星細胞であり、組織が傷害を受けると、それが活性化しコラーゲンを分泌するようになる。この分泌過程にはコラーゲンに特異的なシャペロン蛋白HSP47が補助的に関与する。本研究ではsiRNAHSP47を用いる事により活性化星細胞からのコラーゲン分泌を抑制する事を意図し、ラット肝星細胞での効果を検討したところ、明確に抑制効果が確認された。次いで星細胞がVitamin A(VA)を取り込み貯蔵するという性質を利用して、liposomeにVAを結合させその中に、siRNAHSP47(ラットではsiRNAgp46)を含ませてComplexを作製し、3種類(DMN,CCL4,DBL)の肝硬変ラットモデルでその抗線維活性を調べたところ、いづれのモデルにおいても明確な効果が見られた。また致死的なDMN モデルでは100%の生存率も確保できた。さらに同様な抗線維効果はDBTC膵炎ラットモデルに於いても確認された。本治療効果の機序としてはsiRNAHSP47によりコラーゲン分泌が抑制されると同時に組織中のコラゲナーゼ(一部は活性化星細胞からも分泌される)により既沈着のコラーゲンが分解される事によると考えられる。以上により本研究での開発された臓器線維症の治療法は、今後臨床への展開が多いに期待されるところである。