著者
瀧本 裕士
出版者
富山県立大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

富山県諏訪川用排水地区の洪水調整池は地下水涵養にも資する浸透型に計画されている.しかし,浸透型洪水調整池は全国的にも例が無く,その構造や維持管理手法については未解明である.本研究では浸透メカニズムの定量的な解明を目的として,様々な実験を通じて調整池の浸透機能を評価した.本研究で明らかになった知見を以下に示す.1.カラム実験による目詰まりと浸透量の関係濁質と浸透量の関係について,調整池を繰り返し使用する場合には,濁質の累積によって目詰まりが生じ浸透機能が低下する傾向にあった.特に,基礎地盤がむき出しの場合には,累積濁水投入量が約2000g/m2になると浸透機能が60%に低下することがわかった.基礎地盤に侵入した濁質は除去が困難なことからフィルターを設置するなどの対策が必要である.2.フィルター材の性能評価現地砂をフィルター材として設置した実験では,浸透機能が60%に低下するのに要した累積濁水投入量は約4000g/m2であった.また濁質はフィルター材の上部で捉えられるので,表層部の入れ替えで浸透効果を復帰させることも可能である。したがって,フィルター材の採用はメンテナンスを考える上でも効果的であることがわかった.3.現地湛水実証試験の結果処理区として諏訪川水系内の砺波西中(中流部),神島(上流部)および対照区として太郎丸の3調整池において湛水実証試験を行った.その結果,いずれの調整池も気泡の出現による不飽和浸透の現象がみられた。これは飽和に比べ浸透量が低下する要因となる.また,土壌水分計を設置して,深度方向の水分変化を調べ,浸透解析も行った.その結果,砺波西中では,神島,太郎丸と大きく異なる浸透挙動が確認された.土層の差異もあるが,特に調整池底面から地下水面までの距離が浸透挙動に大きく影響していることがわかった.調整池の運用,管理では地下水位の変動を考慮し,設置場所に応じた対策が必要である