著者
烏帽子田 敬 勝海 一郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.570-581, 2007-10-31
被引用文献数
4

この研究の目的は,エンジン用器具で拡大形成を行ったことを前提にしたテーパーが6/100の樹脂製直線根管模型に,材質,サイズが異なる各種のスプレダーを用い側方加圧充填法による根管充填を行い,ガッタパーチャポイントの圧接状態を評価するとともに,評価方法を比較検討することにある.すなわち1種のステンレススチール製スプレダーDentalEZのStar Dental D11T(S-D11T)と6種のニッケルチタン製スプレダー〔RoekoのNiTi#15(R-15)とNiTi #25(R-25), NiTi #35(R-35)およびNiTi D11T(R-D11T),BrasselerのNaviflex NT D11T(B-D11T)とNaviflex NT 4SP(B-4SP)〕を用い,側方加圧充填法による根管充填を同一スプレダーごとに模型3個ずつ行った.圧接状態の評価は,根尖側6mmの根管壁面に残存する厚さ5μm以下のシーラーの占める割合(GP圧接率),マイクロフォーカスX線CT装置により撮影した根尖から1,2,3,4,5,6mmの全断層面におけるガッタパーチャポイントの占める割合の平均(GP/CT充塞率),根尖から1,2,3,4,5,6mmの全根管切断面におけるガッタパーチャポイントの占める割合の平均(GP総充塞率),各切断位置ごとのガッタパーチャポイントの占める割合の平均(GP位置充塞率)を求め評価するとともに,評価方法の比較検討を行うことにより以下の結論を得た.残存シーラーによるGP圧接率は,B-D11Tが92.1%と最も高く,次いでR-D11T,S-D11T,R-15とR-25,R-35の順で,B-4SPは57.9%と最も低い値を示した.マイクロフォーカスX線CT装置によるGP/CT充塞率は,S-D11Tが96.6%と最も高く,次いでB-D11T,R-D11T,R-25,R-35,R-15の順で,B-4SPは88.9%と最も低い値を示した.根管切断面によるGP総充塞率は, S-D11Tが97.9%と最も高く,次いでB-D11T,R-D11T,R-25,B-4SP,R-15の順で,R-35は90.4%と最も低い値を示した.根管切断面の切断位置によるGP位置充塞率は,S-D11Tが各切断位置で96.9%以上の高い値を示したが,B-D11TはS-D11Tよりも根管先端部での圧接がやや劣り,またR-D11T,R-25,R-15,B-4SP,R-35の順に,根管中ほどで充塞率が低下する現象がみられた.以上の結果より,S-D11T,R-D11T,B-D11Tは良好にガッタパーチャポイントの圧接を行うことができたが,R-35,B-4SPでは十分に圧接を行えないことがわかった.またマイクロフォーカスX線CT装置によるGP/CT充塞率と切断面によるGP総充塞率の評価法については,両者に統計学的な有意差は認められず,マイクロフォーカスX線CT装置による評価の信頼性,有用性が確認できた.