著者
小山 征哉 小倉 陽子 勝海 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.688-697, 2007
参考文献数
41
被引用文献数
3

この研究の目的は,エンジン用の根管拡大形成器具で根管形成を行ったことを想定したテーパーが6/100の樹脂性湾曲根管模型に,材質,サイズが異なる8種のスプレダーを用い側方加圧充填法による根管充填を行い,湾曲根管におけるスプレダーの種類によるガッタパーチャポイントの圧接の違いを評価することにある.すなわちDentalEZの2種のステンレススチール製スプレダー(Star Dental D11T〔S-D11Tと略〕,Star Dental D11〔S-D11と略〕,と,Roekoの4種のニッケルチタン製スプレダー(NiTi #15〔R-15と略〕,NiTi #25〔R-25と略〕,NiTi #35〔R-35と略〕,NiTi D11T〔R-D11Tと略〕),Brasselerの2種のニッケルチタン製スプレダー(Navi-flex NT D11T〔B-D11Tと略〕,Naviflex NT 4SP〔B-4SPと略〕)を用い,側方加圧充填法による根管充填を行った.圧接状態の評価は,マイクロフォーカスX線CT装置により撮影された根尖から1,2,3,4,5,6,7mmの各位置の根管断面に占めるガッタパーチャポイントの割合(ガッタパーチャ充塞率)を求めることにより,各スプレダーの圧接状態の分析を行い,以下の結論を得た.1〜7mmの全断層像におけるガッタパーチャ充塞率の平均は,S-D11Tスプレダーが93.9%と最も高く,次いでB-D11Tが93.7%,S-D11が86.1%,R-25が85.3%,R-D11Tが85.2%,R-15が82.9%,R-35が76.8%,B-4SPが76.2%の順に低下し,根管の封鎖は不十分となった.なおスプレダーの種類が,ガッタパーチャ充塞率に及ぼす影響については高度に有意であることが認められた.1〜7mmの各断層位置における断層像のガッタパーチャ充塞率は,S-D11Tが各断層位置で90.8%以上の,またB-D11Tが90.5%以上の高い値を示した.これに対しR-35は断層位置6mmで65.9%,B-4SPは4mmで69.4%の低い値を示し,充塞率が船底型に大きく落ち込む現象が認められた.なお,R-25,R-15,R-D11T,S-D11でも,充塞率が局所的に低下する落ち込み現象がみられた.以上の結果より,湾曲根管におけるスプレダーの選択に際しては,材質によるしなやかさよりもスプレダーの径やテーパーによる根管への挿入性や圧接性を優先し,選択すべきであることがわかった.
著者
勝海 一郎 山崎 孝子 都築 民幸 北村 和夫 石井 隆資 前田 宗宏 小倉 陽子 好士 連太郎 阿川 透久 宮里 尚幸 大島 克郎 大村 朋己 丸山 博吉 木津喜 美香 小山 征哉 遠藤 春江
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.846-853, 2006
参考文献数
32
被引用文献数
1

On 6 types of Ni-Ti spreader (Roeko NiTi # 15; Roeko NiTi # 25; Roeko NiTi # 35; Roeko NiTi D11T; Brasseler Naviflex NT D11T; Brasseler Naviflex NT 4SP), dimensions were measured under digital microscope, and a load application test was performed in the axial direction of the spreader. The results were as follows: 1. In Roeko NiTi # 15, D<sub>3</sub> was 0.38 mm, D<sub>16</sub> was 0.61 mm, taper was 0.018, and tip angle was 28.9°. Similarly, the above values were 0.32 mm, 0.68 mm, 0.027, and 28.0° respectively in Roeko NiTi # 25. The values were 0.50 mm, 0.70 mm, 0.016, and 32.5° respectively in Roeko NiTi # 35, and the values were 0.37 mm, 0.88 mm, 0.039, and 10.6° respectively in Roeko NiTi D11T. The values were 0.27 mm, 0.77 mm, 0.038, and 29.9° respectively in Brasseler Naviflex NT D11T, and 0.30 mm, 1.06 mm, 0.059, and 35.9° respectively in Brasseler Naviflex NT 4SP. 2. When a load was applied in the axial direction of the spreader, the load was 0.56 kgf in case the portion of 16 mm in length from the tip in Roeko NiTi # 15 was bent at a stroke. When the portion of 5 mm in length from the tip was fixed and the portion of 11 mm in length from the tip was bent at a stroke, the load was 4.32 kgf. The above values were 1.13 kgf and 7.52 kgf respectively in Roeko NiTi # 25, 1.24 kgf and 8.58 kgf in Roeko NiTi # 35, 0.82 kgf and 10.28 kgf in Roeko NiTi D11T, 0.63 kgf and 7.27 kgf in Brasseler Naviflex NT D11t, and 1.02 kgf and 17.61 kgf in Brasseler Naviflex NT 4SP. 3. The Ni-Ti spreader has super-elasticity and is flexible. Thus, it is difficult to apply pressure on it in the axial direction, during lateral condensation. However, this study revealed that sudden bending may be avoided if at least the tip portion of 5 mm in length from the tip is inserted into the root canal.
著者
烏帽子田 敬 勝海 一郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.570-581, 2007-10-31
被引用文献数
4

この研究の目的は,エンジン用器具で拡大形成を行ったことを前提にしたテーパーが6/100の樹脂製直線根管模型に,材質,サイズが異なる各種のスプレダーを用い側方加圧充填法による根管充填を行い,ガッタパーチャポイントの圧接状態を評価するとともに,評価方法を比較検討することにある.すなわち1種のステンレススチール製スプレダーDentalEZのStar Dental D11T(S-D11T)と6種のニッケルチタン製スプレダー〔RoekoのNiTi#15(R-15)とNiTi #25(R-25), NiTi #35(R-35)およびNiTi D11T(R-D11T),BrasselerのNaviflex NT D11T(B-D11T)とNaviflex NT 4SP(B-4SP)〕を用い,側方加圧充填法による根管充填を同一スプレダーごとに模型3個ずつ行った.圧接状態の評価は,根尖側6mmの根管壁面に残存する厚さ5μm以下のシーラーの占める割合(GP圧接率),マイクロフォーカスX線CT装置により撮影した根尖から1,2,3,4,5,6mmの全断層面におけるガッタパーチャポイントの占める割合の平均(GP/CT充塞率),根尖から1,2,3,4,5,6mmの全根管切断面におけるガッタパーチャポイントの占める割合の平均(GP総充塞率),各切断位置ごとのガッタパーチャポイントの占める割合の平均(GP位置充塞率)を求め評価するとともに,評価方法の比較検討を行うことにより以下の結論を得た.残存シーラーによるGP圧接率は,B-D11Tが92.1%と最も高く,次いでR-D11T,S-D11T,R-15とR-25,R-35の順で,B-4SPは57.9%と最も低い値を示した.マイクロフォーカスX線CT装置によるGP/CT充塞率は,S-D11Tが96.6%と最も高く,次いでB-D11T,R-D11T,R-25,R-35,R-15の順で,B-4SPは88.9%と最も低い値を示した.根管切断面によるGP総充塞率は, S-D11Tが97.9%と最も高く,次いでB-D11T,R-D11T,R-25,B-4SP,R-15の順で,R-35は90.4%と最も低い値を示した.根管切断面の切断位置によるGP位置充塞率は,S-D11Tが各切断位置で96.9%以上の高い値を示したが,B-D11TはS-D11Tよりも根管先端部での圧接がやや劣り,またR-D11T,R-25,R-15,B-4SP,R-35の順に,根管中ほどで充塞率が低下する現象がみられた.以上の結果より,S-D11T,R-D11T,B-D11Tは良好にガッタパーチャポイントの圧接を行うことができたが,R-35,B-4SPでは十分に圧接を行えないことがわかった.またマイクロフォーカスX線CT装置によるGP/CT充塞率と切断面によるGP総充塞率の評価法については,両者に統計学的な有意差は認められず,マイクロフォーカスX線CT装置による評価の信頼性,有用性が確認できた.