著者
熊丸 めぐみ 下山 伸哉 岡 徳彦 宮本 隆司 小林 富男
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.267-272, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
20

【目的】小児先天性心疾患手術後患者のICU-acquired weakness(ICU-AW)の発症状況とそのリスク因子を調査すること。【方法】小児先天性心疾患手術後患者255例をICU-AW群と非ICU-AW群に分けて比較検討するとともに,多変量解析にてICU-AWのリスク因子を同定した。【結果】IUC-AWと判定されたのは65例(25.5%)で,多変量解析の結果,筋弛緩薬投与日数(OR:2.358,95%CI:1.693〜3.283,P<0.001),Aristotle basic complexity levels(OR:2.997,95%CI:1.383〜6.495,P=0.005)がリスク因子として同定された。【結論】小児先天性心疾患手術後患者の25.5%にICU-AWを認めた。また,ICU-AWのリスク因子については,背景心疾患や手術後管理が関連していた。
著者
熊丸 めぐみ 大島 茂 谷口 興一 高橋 哲也 山田 宏美 廣瀬 真純 河野 裕治 畦地 萌 横澤 尊代 櫻井 繁樹 安達 仁
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D0593, 2005

【背景】呼吸器疾患患者や心疾患患者は,荷物を運ぶなど上肢が関与する日常生活活動(ADL)中にしばしば息切れを訴える.上肢動作中は,呼吸補助筋である僧帽筋などの肩甲帯周囲筋が上肢活動に参加し,相対的に呼吸を補助する割合が減ることなどにより息切れが生じると考えられている.ADLの中でも特に荷物を持ち上げて運ぶ時に呼吸困難感が増強すると訴える患者も少なくない.本研究では,荷物を持ち上げて運ぶ際に増強する呼吸困難感のメカニズムについて,大胸筋や腹直筋,僧帽筋,広背筋など胸郭を取り巻く筋群が運搬物を固定するために持続的に活動し,胸郭の動きを制限することが原因ではないかとの仮説を立て,その検証を,各種呼気ガス指標や呼吸補助筋,体幹筋の筋電図を測定することで行った.<BR>【対象と方法】対象は健常成人5名(男性3名,女性2名).男性は5kg,女性は3kgのダンベルを両手に把持した状態で6分間のトレッドミル歩行(時速4.8km,傾斜角0度)を各2回施行した.テスト1は上肢下垂位でトレッドミル歩行を行い,テスト2は肘関節90度屈曲位で上腕を体幹前腋下線上で固定した肢位でトレッドミル歩行を行った.各テスト中の酸素摂取量(VO<SUB>2</SUB>)や分時換気量(V<SUB>E</SUB>)など各種呼気ガス指標はコールテックス社製MetaMax3Bを用いて測定し,心拍数(HR)はPOLAR製心拍モニタを用いて連続測定した.表面筋電図は,腹直筋,腹斜筋,大胸筋,胸鎖乳突筋,僧帽筋,脊柱起立筋を被検筋とし,電極間距離は2cm,電極間抵抗は5キロオーム以下となるように皮膚処理を行った後にMega Electronics社製ME6000T8を用いて測定した.サンプリング周波数1kHzでA/D変換を行ってパソコンに取り込み,Mega win2.21により各試行の生波形をRMS変換し終了前1分間の積分値を算出した.<BR>【結果】VO<SUB>2</SUB>,V<SUB>E</SUB>,呼吸数,HRはいずれもテスト2において有意に高値を示した.換気効率を示す二酸化炭素に対する換気当量(V<SUB>E</SUB>/VCO<SUB>2</SUB>)も,テスト2において有意に高値を示した.また,各筋の活動量もテスト2において増加し,特に胸鎖乳突筋,大胸筋,僧帽筋,脊柱起立筋で有意な増加が認められた.<BR>【考察】同量のダンベルを負荷し,同速度で歩行しているにもかかわらず,VO<SUB>2</SUB>やHRなどの呼吸循環反応がテスト2で高値を示したのは,上腕二頭筋をはじめ大胸筋や脊柱起立筋などがより多く活動したことよるものと考えられた.また,V<SUB>E</SUB>/VCO<SUB>2</SUB>がテスト2において有意に高値を示したことは,ダンベルを持ち上げている最中は,胸郭に固定された上肢の重さや,大胸筋などの等尺性筋活動により胸郭の動きが制限されたことが換気効率を低下させた要因と考えられた.さらには,胸腔内圧の上昇が静脈還流量を減少させたり,肺動脈圧を上昇させたことが呼吸困難感の増強に影響していたと考えられた.
著者
高橋 哲也 Jenkins Sue 安達 仁 金子 達夫 熊丸 めぐみ 櫻井 繁樹 大島 茂 谷口 興一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.31-37, 2001-03-31
被引用文献数
3

冠動脈バイパス術後の早期呼吸理学療法の効果を無作為化比較対照試験によって検討した。対象は冠動脈バイパス術後患者105例で次の3群に群分けした。コントロール群(Control[C]群35例, 特別な呼吸理学療法は行わず, 標準的な早期離床プログラムのみを行う)。スパイロメータ群(Incentive Spirometer[IS]群35例, 術後1日目の朝よりインセンティブスパイロメータを用いて10回の深呼吸を監視下で1日2回行う。また適時自主的に深呼吸をするように指示)。人工呼吸器離脱後から翌朝まで呼吸理学療法を行う群(Overnight Chest Physiotherapy[OCP]群35例, 術当日, 抜管直後から介助下での深呼吸を術翌日の朝まで2時間おきに行う)。3群間の平均年齢, 平均身長, 平均体重, BMI, 男女比, 喫煙歴, 呼吸器既往症の有無, 術前心機能, バイパス本数, 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 麻酔時間, 人工呼吸器離脱までの時間, 起立までの期間, 病棟内歩行自立までの期間に差を認めなかった。手術後酸素投与終了までの期間はOCP群が他の群に比べて有意に短かった(C群5.9±2.8日, IS群5.2±2.0日, OCP群4.3±1.2日, p<0.05)。術後ICU滞在中に肺炎は認めなかった。無気肺はC群で3例(8.6%), IS群3例(8.6%)に認めたが, OCP群では認めなかった。これらの結果から冠動脈バイパス術後の呼吸理学療法は人工呼吸器離脱直後から夜間を経て早朝まで行い, 術後早期に十分な肺の拡張を促すことの重要性が示唆された。また, 術翌日からインセンティブスパイロメータを用いた呼吸理学療法では早期離床に付加する効果は少ないことが示された。