著者
藤井 龍彦 熊井 茂行 加藤 隆浩 友枝 啓泰
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

3年計画の調査の最終年度である本年度の現地調査は、短期間の補充調査にしぼった。調査の中心は、2002年秋に行われた全国的地方選挙に関して、クスコ県の地方都市のケースを具体例として、決起大会にはじまり、政策綱領の策定、選挙終了時の総括、評価、活動記録など、地方における選挙活動の実態に関する録音テープによる記録を分析し、それらのデータに基づいて現地研究協力者と意見を交換した。さらにその他のインタビュー資料も併せて、ペルーの地方政治の実態を分析した。分析結果は、現在まとめつつある、これまの分析で、都市・農村を問わず、住民の政治意識はかなり高いこと、その際の基準はあくまでも自分たちの利益にかなうかどうかであること、つまり、農民の場合、低利の融資、トラクターや肥料・農薬などの安定した供給などであり、都市住民の場合、雇用の確保、道路の建設、公設市場の運営などにある。結果として、前回の選挙もあいかわらず利益誘導型の金権選挙が幅をきかせ、一方で教会を中心とした既成の権力の介入を止めることができなかった。