著者
藤宮 大 熊田 貴彦 中村 好克 宮田 英雄 中島 茂 野澤 義則
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.142-151, 1994
被引用文献数
6

ラット好塩基球性白血病(RBL-2H3)細胞を用いて, 抗原刺激による膜リン脂質代謝, カルシウム動態を検討し, 抗アレルギー薬TBX(ペミロラストカリウム)の作用機序の解明を試みた. 抗原刺激による分泌反応を, TBXは濃度依存的(0.01〜10μg/ml)に抑制した. また, TBXは分泌反応を抑制する同等の濃度で, セカンドメッセンジャーであるイノシトール1, 4, 5-トリスリン酸の産生とカルシウムの動員を抑えた. 従って, ホスホリパーゼC(PI-PLC)の活性化を抑制していることが示唆された. PI-PLC の活性化に続く, 主にホスファチジルコリンに由来する1, 2-ジアシルグリセロールとホスファチジン酸の産生も抑制された. さらに, エイコサノイドの前駆体であるアラキドン酸遊離を抑えることから, ホスホリパーゼA_2の活性化抑制も推測された. ホスファチジルコリンの分解, ホスホリパーゼA_2活性化は, イノシトールリン脂質代謝(PI-PLC活性化)が引き金となっていることから, PI-PLC活性化抑制がTBXの作用点として重要であると考えられる.