著者
熊谷 嘉隆
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2016

秋田県内には集落単位で数多くの民俗芸能が継承されている。各民俗芸能は集落の歴史や誇りが凝縮されており、加えて集落の絆を深める極めて重要な行事でもある。一方で、それら民俗芸能の多くは後継者・資金不足、集落内外での興味の低下等からその存続が危機に瀕しているものが少なくない。平成5 年に秋田県教育委員会が実施した「秋田県民俗芸能緊急調査」では315 件の民俗芸能が把握されたが、本調査(平成22〜24年実施)で確認できたのは275 件であった。つまり過去19 年間で38 件(毎年2件)のペースで県内から民俗芸能が消滅していることになる。また、民俗芸能によっては今後数年以内に消滅を免れないであろうものも散見され、各集落はその存続に懸念を抱いているが有効な対策が講じられないまま現在に至っている。一方でいくつかの民俗芸能保存団体では従来にない取り組みによって存続を図ろうとする動きも見られ、今後は「存続と消滅」の二極化が進むと思われる。本稿では平成22年度から3 年間、文化庁の「地域伝統文化総合活性化事業」により実施した秋田県内の民俗芸能調査を踏まえ、そこから浮かび上がってきた現状・課題、そして今後について検証する。
著者
根岸 洋・上野 祐衣・熊谷 嘉隆
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.111-120, 2020 (Released:2020-11-13)

江戸時代の「ねぶり流し行事」を原型とする「秋田の竿灯」は、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定された文化遺産である。1931年に発足した秋田市竿灯会は妙技会を初めて開催し、その後「竿燈」の用語が広く用いられるようになった。実行委員会が主催する「竿燈まつり」となったのは1965年以降である。現在行事の後継者不足は顕在化していないものの、今後の少子高齢化が予想されることから、若年層確保のための取り組みが幾つか行われている。また本行事に外国人参加についてのガイドラインは設置されておらず、国際教養大学およびその前身であるミネソタ州立大学秋田校の竿燈会という組織単位で、外国人留学生が継続的に参加している。他方、各町内会の竿燈会のメンバーになるためには町内に一定期間住むことが求められるため、滞在期間が限られる留学生にとってはハードルが高いのが現状である。
著者
熊谷 嘉隆
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-7, 2018 (Released:2018-09-27)

我が国には43 ヶ所のジオパーク( 2017 年 10 月現在)が登録されている。ジオパークを有する地元自治体はジオパークを地域資源再認識の切り口として、またジオツーリズム促進による地域振興の目玉としてその運営を全面的に支援している。ただ、ジオパークは国の所管官庁を有さないほか、法的裏付けもない。 一方で 43 ヶ所のジオパークのうち 25 カ所が国立公園地域と重複しており、ジオパークの運営をめぐっては国立公園法の制約の中で実施されている。ただ、ジオパークと国立公園の指定・運営目的においては共通項も多く、相互補完的にそれぞれがその存在を 強化しつつ地域振興に接続させる取り組みも行われている。本稿では我が国のジオパークと国立公園の現状、そして両者が併存する公園における地域観光振興の課題と可能性について論じる。