著者
片倉 喜範
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.596-600, 2019-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
17

抗酸化作用,緩衝作用,抗疲労作用など多くの機能を有することが知られている高機能ジペプチドイミダゾールジペプチドは,最近行われた中高齢者ボランティアに対する二重盲検ランダム化比較試験の結果から,記憶機能改善効果を示すことが明らかとなっている.つまりイミダゾールジペプチドは,腸と脳との相互作用を活性化させうることが報告されてはいるが,その分子基盤についてはいまだ明らかになっていない.本解説では,イミダゾールジペプチドの1種カルノシンによる脳腸相関活性化機能の詳細とその機能性の分子基盤に関し,最近の知見を踏まえ紹介したい.
著者
片倉 喜範 藤井 薫 原田 額郎 山下 俊太郎 門岡 桂史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Caco-2細胞をヒト腸管モデル細胞株として用い、SIRT1プロモーター制御下でEGFPを発現するベクターを安定導入した組換えCaco-2細胞を樹立した。フローサイトメーターを用いてEGFPの蛍光強度の変化を追跡した結果、乳酸菌T2102株を陽性菌として選定した。T2102株は、SIRT1の活性化の結果、β-カテニンの脱アセチル化を誘導するとともに、その発現を消失させうることが明らかとなった。また、T2102株はDLD-1細胞におけるテロメラーゼ発現も抑制するとともに、細胞老化を誘導することが明らかとなった。またがん細胞抑制能が足場非依存性増殖能及び造腫瘍能の結果より明らかとなった。
著者
片倉 喜範
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.531-537, 2009-08-01 (Released:2011-07-14)
参考文献数
37

老化・寿命制御のメカニズムが明らかにされていくなかで,インスリン/IGF-Iシグナル伝達系とサーチュイン(sirtuin)遺伝子という,ともに進化的によく保存された老化・寿命制御シグナル・因子が同定されてきた.なかでもサーチュインは,老化を遅らせ,寿命を延長しうる唯一確実な方法であるカロリー制限に対する生体応答に必須の因子であることが示されるとともに(1),NAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するという性格上,エネルギー代謝と老化を結びつける重要なメディエーターであるとの認識が高まり,最近ではサーチュインをめぐる研究はめまぐるしい進展を見せている.ここでは,老化・寿命制御因子としてのサーチュインのアンチエイジング活性,その発現・機能制御の分子機構,さらにはアンチエイジング創薬ターゲットとしての可能性について紹介する.