著者
片山 雅史 髙野 吉朗
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.637-643, 2019-10-25 (Released:2019-10-25)
参考文献数
11

近年,主に加齢による筋委縮が原因となって,日常生活に支障が生ずるサルコペニアと呼ばれる症状が問題になっている。本研究では簡易な測定項目でのスクリーニングを目的として,大腿直筋の表面筋電図と筋の超音波像による計測の精度を検証した後,膝伸展時に一定の負荷をかけた時の変化を観察した。大腿直筋のほか,比較対象として外側広筋および内側広筋についても観察した。3筋の筋腹皮膚上にて,安静時,弱負荷時および強負荷時に筋電図を記録した。記録した筋電図は,整流後に積分してその面積を求め,筋放電量として評価に用いた。形状の観察は超音波検査装置を用いて,筋の径と断面積・周囲長および羽状角を計測した。等尺性収縮により,筋放電量は,弱負荷から強負荷と有意に増加した。超音波像による筋の評価では,短軸で断面の観察において,プローブの触圧で変動する項目があり,筋の周囲長を用いることが適切であると考えた。周囲長と羽状角は自重の負荷で上昇したが,さらに追加の負荷をかけても値はほぼ一定で変化は見られなかった。何らかの補正が必要となる可能性はあるが,本法によって筋の評価が可能であることが示唆された。