- 著者
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清水 宣明
片岡 えりか
西村 秀一
脇坂 浩
- 出版者
- 一般社団法人 日本環境感染学会
- 雑誌
- 日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.2, pp.96-104, 2012 (Released:2012-06-05)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
-
2
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インフルエンザの流行では,曝露歴が少なく活動性が高い児童が密集して長時間生活する小学校が感染の増幅器となることが懸念され,そこでの対策は地域の感染制御において重要な位置を占める.しかし,その流行の仕組みについての知見は少ない.本研究では,三重県多気郡明和町立下御糸小学校(全校児童163名)における2009年10月から2010年1月までのA(H1N1)pdm09パンデミックインフルエンザの発症状況を解析した.流行期間は79日間で罹患率は49.1%,1日あたりの平均発症は1.01人であった.児童発症日数は43.0%で,そのうち3人以下と比較的少人数の発症日が80.0%を占めた.5人以上と比較的多くの発症があった日は13.3%に過ぎなかった.発症認識の24時間前から他への感染可能なウイルス量が排出されたと仮定して,潜伏期間と発症日時から児童間の感染可能性の連鎖を推定した.発症児童の感染源は,学級内が50.0~66.7%,学級外(家庭を含む)が33.4~50.0%程度であった.下御糸小学校での流行は,急激で連続的な拡大ではなく,児童が学級外で感染して学級内で数人に感染させることもあるが,その感染可能性の連鎖はすぐに切れるということの繰り返しによって徐々に進行し,その途中で,集団感染の可能性のある同時多発発症が数回起こった可能性が示唆された.