著者
星野 洪郎 清水 宣明 大上 厚志 藤木 博太 田中 淳
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

アジア地域でのHIV-1感染症の特殊性をタイのチェンマイ大学を共同研究の拠点として解析を行なった。タイには既に60万人の感染者がおり、その内2万人は子供である。HIV感染児では、大人より病気の進行が早く、治療効果の判定や薬剤の副作用の判定が早くできることがある。チェンマイ近郊には、HIVに感染した孤児を世話している国営の施設があり、経過観察や治療は、もっぱら国立病院やチェンマイ大学で行っている。文橡者の定期的な検査とその病態の関連をウイルス学的に解析してきた。このようにHIV感染小児の病態を解析しやすい体制を整えることができた。抗酸化物質にヒトのがんの発症を抑制する働きがあることが、多くの疫学的論文で報告されている。一方酸化ストレスやTNFαが、HIV-1感染症などの慢性感染症でウイルスを活性化させ、病気の進行を促進すると考えられている。抗酸化作用を持ち、TNFαを阻害する緑茶抽出物やアスタキサンチンなどの抗酸化剤は、HIV-1感染症の進行を抑える可能性が考えられる。これらについて介入的疫学研究を行う準備をしている。我々は、HIV-1感染の新しいコレセプターとして新しいコレセプターを同定し解析した。日本人感染者、タイの感染児の抹消血を用い、経時的に解析し、新しいコレセプターの臨床的、疫学的の意義を明らかにした。すなわち、HIV-1感染の新しいコレセプターとして、D6,CCR9b, XCR1およびFML1を同定し、解析を始めた。D6は、日本人血友病患者由来のsubtypeBのdual-tropic HIV-1、FML1はタイ、ベトナム由来のsubtypeAEおよびCのウイルスで利用した。これまでの研究期間の間に、タイの規則が厳しくなり、タイ人の試料は,許可なしには持ち出せず、国外持ち出しの手続きに長時間かかるようになった。緑茶抽出物をHIV感染者に投与するには、チェンマイ大学の倫理委員会に書類を提出しなければならないが、審査を受けるのに非常に時間がかかることが明らかとなった。現在手続きを進めている。
著者
清水 宣明 片岡 えりか 西村 秀一 脇坂 浩
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.96-104, 2012 (Released:2012-06-05)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

インフルエンザの流行では,曝露歴が少なく活動性が高い児童が密集して長時間生活する小学校が感染の増幅器となることが懸念され,そこでの対策は地域の感染制御において重要な位置を占める.しかし,その流行の仕組みについての知見は少ない.本研究では,三重県多気郡明和町立下御糸小学校(全校児童163名)における2009年10月から2010年1月までのA(H1N1)pdm09パンデミックインフルエンザの発症状況を解析した.流行期間は79日間で罹患率は49.1%,1日あたりの平均発症は1.01人であった.児童発症日数は43.0%で,そのうち3人以下と比較的少人数の発症日が80.0%を占めた.5人以上と比較的多くの発症があった日は13.3%に過ぎなかった.発症認識の24時間前から他への感染可能なウイルス量が排出されたと仮定して,潜伏期間と発症日時から児童間の感染可能性の連鎖を推定した.発症児童の感染源は,学級内が50.0~66.7%,学級外(家庭を含む)が33.4~50.0%程度であった.下御糸小学校での流行は,急激で連続的な拡大ではなく,児童が学級外で感染して学級内で数人に感染させることもあるが,その感染可能性の連鎖はすぐに切れるということの繰り返しによって徐々に進行し,その途中で,集団感染の可能性のある同時多発発症が数回起こった可能性が示唆された.
著者
林 良茂 川西 琢也 清水 宣明 藤原 保彦 中根 隆
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-87, 1996 (Released:2011-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1

NO2-NO-N2-水溶液系半回分式吸収実験を1.5×102<PNO2<6.2×102Pa, 0.4<PNO<5.1Paの条件下で行い, 水溶液中の [NO2-],[NO3-] の経時変化を調べた。暴露時間の経過に伴う吸収速度の変化から, 吸収速度を支配する反応式を推定し, 反応機構の移り変わりを調べた。その結果, 反応は以下の機構で進行することが明らかとなった。N2O4 (g) (2NO2 (g)) +H2O (1) =2H++NO2-+NO3-NO (g) +NO2 (g) (N2O3 (g)) +H2O (1) =2H++2NO2-↓3/2N2O4 (g) (3NO2 (g)) +H2O (1) =2H++2NO3-+NO (g)NO2-+NO2 (g) =NO3-+NO (g)拡散支配領域でのデータとこの領域で適用できるDanckwertsの提示した速度式から液相反応 [A4/1], N2O4 (a) (2NO2 (a)) +H2O (1) =2H++NO2-+NO3-, の反応速度定数kA4/1を求めた。そして吸収液のpHの影響を調べた結果, kA4/1=1.85 [H+] -0.20の関係を得た。この関係式は, pH=5~13の水溶液中にNO2 (a), N2O4 (a) が共存する条件下において, 反応速度定数kA4/1を十分に表現している。
著者
板野 理 松田 祐子 清水 宣明 荻野 千秋 藤村 智賢 佐谷 秀行 大島 正伸
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

悪性腫瘍による閉塞性黄疸に対しての金属性ステントを用いた姑息的減黄術はtumor ingrowthによるステント閉塞の問題が増加している。本研究では、チタン合金ステントに超音波を照射し、ラジカルの産生を利用したステント内再閉塞を予防・改善するための無侵襲的治療法の確立を目的とした。チタン合金に対し1MHzの超音波を30秒0.3 W/cm2照射し超音波のみと比較したところ、チタン合金で高いフリーラジカルの発生が確認され殺細胞効果も最も高かった。悪性腫瘍ステントモデルでは、1MHz、0.3W/cm2、10分の超音波照射を行った。超音波照射群でステントへのingrowth抑制が確認された。