著者
森脇 伸二郎 加藤 圭彦 片岡 秀雄 田口 敏彦 豊田 耕一郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.116-120, 2008 (Released:2008-05-23)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

強直性脊椎骨増殖性(ASH)に発生した脊椎骨折の3例について報告する.年齢は77~86歳,男性2例,女性1例であった.いずれも転倒により受傷し,胸腰椎移行部に発生し,骨癒合が遅延し偽関節となっていた.遅発性の神経障害を生じており,手術的治療が施行された.手術は前方固定が1例,後方固定が2例であった.後方法はpedicle screwを用いた脊椎固定術と椎弓切除を行い,椎体内の骨欠損部を充填する様に骨移植した.後方固定術では術後骨癒合は完成し,日常生活に復帰した.ASHでは骨折に隣接する椎間の可動域がないために,骨折部に応力が集中して,偽関節になりやすいと考えられる.治療方針を決める上で,X線機能写を撮り,不安定性の評価が重要である.神経麻痺や不安定性のある場合,高度な痛みの持続する場合は可及的早期の手術的療法が良いと考える.
著者
片岡 秀雄 吉田 佑一郎 田口 敏彦
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.102-105, 2008

【はじめに】我々は胸髄レベルでの脊髄損傷の治療を想定して,ラットを用い脊椎・脊髄短縮モデルを作成した.開発の途中ではあるが,今までの成果を報告する.【対象と方法】生後13~16週のWistarラットを使用した.第8胸椎椎体レベルの脊髄を切断後に除去し,第8胸椎椎体の切除を行った.第6と第10胸椎椎弓根に挿入したmini screwに糸をかけ,脊髄が吻合する様に引き寄せて固定した.【結果】当初は術後の長期生存は困難であったが,術中の出血量の減少や術後管理の工夫などで術後2カ月以上の生存がほぼ可能となった.術後の運動機能はBBBスコアを用い評価し最大で5であった.組織学的に吻合部は連続していたが,間には瘢痕が形成されていた.【考察】今後,モデルに改良を加え,脊髄の吻合部を越えた神経軸索の接合が起きれば,脊椎・脊髄短縮術は脊髄損傷後の完全麻痺に対して臨床応用できる可能性があると考えられる.