著者
武内 和弘 小澤 由嗣 長谷川 純 津田 哲也 狩野 智一 上田 麻美 豊田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.165-174, 2012-08-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本邦初の医療機器承認を取得した「舌圧測定器(TPM-01,JMS 社,広島)」を用いて,舌機能の定量的評価法としての舌圧測定の有用性について検証した.対象は,脳血管障害または神経筋疾患に由来する嚥下障害または構音障害を有する患者(障害群)115名で,それらの障害を有しない患者29 名を対照群とした.調査は,舌圧測定と同時に,基礎疾患名,嚥下障害と構音障害の有無,反復唾液嚥下テスト(RSST),会話明瞭度などについて実施した.舌圧は,前舌による最大押し付け力(最大舌圧)を3 回測定し,その平均値を舌圧値とした.また,舌圧測定の有用性の検証を目的として,舌圧測定値の再現性と,従来の口腔・構音・嚥下機能評価項目との関連について調査した.本器によって測定した舌圧値の信頼性(安定性)は,障害群と対照群の舌圧値の標準偏差(障害群平均2.8 kPa,対照群平均2.2 kPa)が先行研究の結果(平均3.1 kPa)と同等であることから推定した.また,舌圧値と従来の手法による評価法との関連性について,以下の知見を得た.障害群は,対照群よりも有意に低い舌圧値を示した.嚥下障害グレードが中等症(Gr 4~6)および軽症(Gr 7~9)の患者は,正常群(Gr 10)および対照群の患者より舌圧値が有意に低かった.また,準備期および口腔期に嚥下障害を有する患者の舌圧値は,対照群よりも有意に低値であった.RSST 2 回以下の患者の舌圧値は,RSST 3回以上の患者および対照群の舌圧値よりも有意に低かった.以上より,開発したJMS 舌圧測定器を用いて測定した舌圧値は,① 良好な再現性を示し,本器は,② 臨床上問題なく使用できることが明らかとなった.さらに,③ 測定した舌圧値と従来の機能評価との関連性も指摘できた.すなわち,舌圧の測定が,従来の定性的評価を主体とする機能評価に,客観的で定量的な指標を与え,例えば嚥下障害等の評価において,本舌圧測定器が臨床上有用な測定ツールとなることが示唆された.
著者
森脇 伸二郎 加藤 圭彦 片岡 秀雄 田口 敏彦 豊田 耕一郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.116-120, 2008 (Released:2008-05-23)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

強直性脊椎骨増殖性(ASH)に発生した脊椎骨折の3例について報告する.年齢は77~86歳,男性2例,女性1例であった.いずれも転倒により受傷し,胸腰椎移行部に発生し,骨癒合が遅延し偽関節となっていた.遅発性の神経障害を生じており,手術的治療が施行された.手術は前方固定が1例,後方固定が2例であった.後方法はpedicle screwを用いた脊椎固定術と椎弓切除を行い,椎体内の骨欠損部を充填する様に骨移植した.後方固定術では術後骨癒合は完成し,日常生活に復帰した.ASHでは骨折に隣接する椎間の可動域がないために,骨折部に応力が集中して,偽関節になりやすいと考えられる.治療方針を決める上で,X線機能写を撮り,不安定性の評価が重要である.神経麻痺や不安定性のある場合,高度な痛みの持続する場合は可及的早期の手術的療法が良いと考える.