著者
清水 昌 片岡 道彦 小林 達彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

(1)土壌より分離した糸状菌Mortierella alpina 1S-4をグルコースを主炭素源とする培地で培養すると、菌体中に著量のアラキドン酸含有油脂を蓄積することを見いだした。本菌を用いてアラキドン酸含有油脂の蓄積量増大に関する培養条件の検討を行った。炭素源としてグルコースと共にオリーブ油、パーム油などのオレイン酸含有油脂を併用すると、菌体油脂中の不飽和脂肪酸の割合が著しく上昇することを見いだした。また、培養時間の延長、窒素飢餓条件下でグルコースなどの炭素源の添加は、アラキドン酸含量の上昇に寄与した。最適条件下でのアラキドン酸生産量は約5g/lに達した。(2)本菌のアラキドン酸生合成経路の解明を行った。その結果、本菌ではグルコースから生成したステアリン酸が不飽和化と鎖長延長を繰り返してアラキドン酸へ至ることを生合成経路の各中間体を単離することにより明らかにした。(3)アラキドン酸生合成に関与するΔ5不飽和酵素反応について検討を加え、本反応の特異的阻害剤が天然物中に存在することを認めた。ゴマ種子、ウコンの抽出物から阻害剤の単離を試み、それぞれセサミン関連リグナン化合物、クルクミンを単離・同定した。(4)上記のゴマ種子抽出物またはウコン抽出物を本菌の培養液中に共存させて培養を行うと、Δ5不飽和化反応が抑制され、アラキドン酸の前駆体であるジホモ-γ-リノレン酸が蓄積することを認めた。最適条件下での生産量は3.2g/lであった。