- 著者
-
片方 恵子
- 出版者
- 安全工学会
- 雑誌
- 安全工学 (ISSN:05704480)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.6, pp.433-438, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
- 参考文献数
- 13
クライシス・コミュニケーションとは,危機的事態覚知後にダメージを最小化するために行う言語・非言語を用いるレスポンスのことであり,リスク・コミュニケーション活動の一つに位置付けられる.クライシス・コミュニケーション戦略の一般的理論はすでに存在するものの,国民文化の相違によって,受け手となるステークホルダーによる評価は一様ではない.本稿は,日本,米国,中国について,各国の国民文化,社会システムの特徴および危機事例を挙げ,受け手の評価を概括し,各国に適切なクライシス・コミュニケーション戦略を論ずることを目的とする.その結果,トップによる謝罪,実直であることが評価される傾向の日本,対立を恐れずに明瞭な主張が評価される傾向の米国,調和を図ることが評価される傾向の中国といった,異文化的価値観を理解した上でのコミュニケーションが欠かせないことが検討できた.