著者
片野 浩一 石田 実
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.70-95, 2017-09-29 (Released:2020-02-25)
参考文献数
26

オープン・メディアの代表である動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」の利用ユーザーが世界的に拡大している。YouTubeは,他のソーシャルメディアのように,当初はユーザーが生成するコンテンツ(UGC)の投稿と視聴の場として成長してきたが,ここにきて企業も公式チャンネルを相次いで開設しており,企業主導型コンテンツ(FDC)を公開するようになった。YouTubeは今や最もユーザーに影響力のあるオープン・メディアとして,従来のマス・メディアをしのぐ勢いを見せている。オープン・メディアという共通の土俵の中でFDCとUGCは競争・共存する時代となった。しかし,YouTubeのコンテンツ情報の仕組みには不明な点が多い。そこで,音楽コンテンツを取り上げ,レコードレーベル(FDC)と,ボーカロイド楽曲(UGC)がYouTubeというオープン・メディアを通じて市場にどのように受容され,普及しているのかを探索的に研究する。音楽業界における企業主導型とユーザー生成型というコンテンツ特性の違いが視聴にどのように影響するのか。また新規の投稿コンテンツの普及プロセスについて,YouTubeのAPIデータを用いて実証研究を行った。そこから得た知見は,FDCのチャンネルには所属アーティスト間で関係をつくる互恵的なネットワーク構造があり,それが視聴成果にプラスに影響していた。一方のUGCチャンネルではそうした関係が見られず,その自律的なネットワークは視聴成果に影響を与えない。一方で新規に投稿される新作コンテンツの普及はFDC,UGCともにピークが垂直型に立ち上がるプロセスであり,その逓減はUGCでゆるやかになる傾向がみられた。
著者
片野 浩一 石田 実
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.88-107, 2015-06-30 (Released:2020-05-19)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究では,ボーカロイド(歌声合成ソフトウェア)製品のユーザーが,音楽や作詞,イラスト等の作品を創作して投稿する連鎖について調べ,ユーザー・コミュニティの構造について考察する。「初音ミク」製品を使用してユーザーが作品を動画共有サイトや創作投稿サイトに発表し,その楽曲やイラストが人気となり,社会現象となっている。このユーザー主導で創発された作品の中からビジネスに展開されるコンテンツが増え,企業にとっても大きなビジネス機会として注目される。この現象には,売り手である企業と買い手であるユーザーとの間に高度な価値共創が見られる。本研究では,その価値共創からコンテンツが生み出される苗床ともいえるユーザー・コミュニティに着目し,作品創作の連鎖について社会ネットワーク分析を行う。そこから,創作連鎖の実際の形状が可視的に解明されるとともに,イノベーション・ユーザーの行動について探索的な発見を試みた。結論として,趣味コミュニティにおける現代のユーザーの社会参加の在り方が示唆されると同時に,企業がイノベーション成果を活用する先端的な取組みも見出した。