- 著者
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牛 承彪
- 出版者
- 関西外国語大学
- 雑誌
- 研究論集 (ISSN:03881067)
- 巻号頁・発行日
- vol.100, pp.115-134, 2014-09
トン族村における空間意識は、「生業空間」と「生活空間」に分けられ、「生活空間」はさらに居住区域によって細かく分けられている。「生活空間」はその外に比べれば安全で清潔である。「攔路歌」行事はこの意識に基づいて成立し、歌の掛け合いを通して、村に入る来客の穢れを落とすのである。村には聖域として、「鼓楼」・「薩壇」・「土地神」の祠・大木・大きい石・橋・墓地などがあり、「生活空間」の中に点在している。「鼓楼大歌」が行われる際、村の守護神を降臨させ、参加者と空間を共有するので、この行事は男女の交流を目的にすると同時に神を楽しませる性格を持つ。聖域以外は俗の空間であるが、日常の中では人間の目には見えない「鬼怪」がさまよったりする。それで常に清潔を保つようにしなければならない。また死後いくとされる場所は、「ダイダン川」「十八羅漢山」「平白地」「九十九瑙」があり、「この世」と同じ地平線の山中に位置する。