著者
牛之濱 久代 宮薗 夏美
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.141-147, 2003-03
被引用文献数
1

本稿は,12世紀ドイツにあって女子修道院長をつとめ,独特の考え方に基づき医療・救済活動を行ったヒルデガルト・フォン・ビンゲン(Hildegart von Bingen)について,『自然学』(Physica)の中の「植物の書」及び『病因と治療』(Causae et Curae)を手がかりに,根本となる人間観・医療観・疾病観に焦点を当て,彼女の医療活動の現代における意義を考察したものである。その結果,ヒルデガルトの考え方の特徴は,人間を宇宙も含めた全体の中で捉え,すべてを連関するものと考えているということであり,これは,'90年代半ば頃よりめざましく普及してきた代替医療や,看護に見られる,人間を身体,精神,霊魂も含めた統一体として捉える人間観と共通するものであった。そしてホリスティック(holistic)な考えに基づく医療活動は,人間を心身両面から癒す行為,すなわち救済であり,看護実践において有益な示唆が得られるものでもあったので報告する。
著者
中島 通子 牛之濱 久代
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.82-89, 2007-04-01
参考文献数
9
被引用文献数
3

本研究の目的は,立ち会い分娩を実施した夫がいかなる体験をしたか,またそれに対する意識について明らかにすることである。さらに夫へのサポートのあり方を考察する。方法は立ち会い分娩を経験した夫142名に対し,同意を得た後,自記式アンケート調査を実施した。その結果,夫自ら立ち会い分娩を決定した者106名75%(グループA),妻,助産師,友人から勧められ立ち会いを決定した者36名25%(グループB)であった。立ち会い分娩後の夫は,(1)子どもへの愛情(2)妻への愛情(3)父親の自覚の3つを感じていた。グループAは「妻との経験を共有」についてより強く感じていた(p=0.008)また,「実施可能なケアについて教えて欲しい」と希望していた(p=0.002)。グループBは立ち会い分娩終了後「無力感」を強く感じていた(p=0.009)。新しい家族の誕生は,夫・妻にとって喜びとともに課題でもある。本研究では,夫たちは自ら出産に父親としての役割を見出し責任を果たそうとしていることが明らかになった。