著者
金子 洋平 中村 仁 塩田 あづさ 鈴木 健 鈴木 達哉 幸 由利香 牛尾 進吾
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.3-10, 2014 (Released:2014-04-05)
参考文献数
10

ナシ萎縮病菌(Fomitiporia sp.)の伝染源と考えられる担子胞子の飛散消長を明らかにした.2008~2011年に野外において,延べ8個の子実体を供試し,それらの直下にグリセリンゼリーを塗抹したスライドグラスを設置して担子胞子を採取した.4年間における胞子飛散は断続的であったものの,開始時期は5月31日~7月7日,終了時期は11月10日~11月21日の間であった.それぞれの時期の気温は,17.0~24.5°C,12.1~14.1°Cであり,飛散開始時期はいずれの年も梅雨期間中であった.12月から翌年の5月までは担子胞子の飛散はほとんど認められなかったことから,1年間における飛散期間は,概ね6~11月であると考えられた.この期間中における飛散の中断時期は,降雨の無い日が継続した時期(主に夏季)と概ね一致した.2011年の夏季に供試子実体に散水を適宜行ったところ,胞子の飛散はほとんど中断しなかった.室内試験において,本菌の胞子の飛散は20~30°Cの範囲で起こり,10,15および35°Cでは胞子の飛散は停止した.また,乾燥条件が継続すると,胞子の飛散は停止することが明らかとなった.気温と水分条件は胞子形成およびそれに続く飛散に影響を与えた.