著者
新美 芳二 中野 優 牧 健一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.919-925, 1996-03-15
被引用文献数
5 11

リーガルユリ (<I>Littttm regale</I>) の強健な性質をヒメサユリ (<I>L. rubellum</I>) に導入することを目的として,両種間で相互交雑を行った.<BR>1.リーガルユリ×ヒメサユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉により低率 (3.3%)ながら有胚種子が得られた. しかし, それらの種子はバーミキュライトおよび試験管内に播種しても発芽しなかった. リーガルユリ×ヒメサユリの雑種実生は受粉30~60日後に胚珠培養を行うことにより得られ, その頻度は5.3~6.7%であった.<BR>2.ヒメサユリ×リーガルユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉では受粉後に花粉管が花柱内で伸長を停止し, 受精が起こらなかった. しかし, 開花2~5日後に柱頭受粉を行うことにより花粉管伸長が促進され,開花5日後の受粉では胚形成が確認された. 花柱切断受粉は胚形成に効果がなかった. 開花5日後の受粉により得られた胚は, 胚珠培養を行っても救出することができなかった.<BR>3.リーガルユリ×ヒメサユリから得られた個体の雑種性はrDNA分析により確認された. 調査したすべての雑種は二倍体であり, 花粉稔性は3%以下であった. 雑種個体の花色は淡桃色であった. また, 二重咲きの花をもつ雑種も1系統得られた.