著者
工藤 暢宏 木村 康夫 新美 芳二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-12, 2002 (Released:2007-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
9 11

カシワバアジサイの有用形質をセイヨウアジサイに導入することを目的として,種間雑種の作出方法を検討した. 1.セイヨウアジサイを種子親,カシワバアジサイを花粉親にした種間交配では,受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大し,さく果を形成するが,完全な種子はできなかった. 2.交配後のさく果から胚珠を取り出し培養すると胚が発達して,肥大した胚が出現することが確認された.しかし,‘ハルナ’を種子親にした場合では,出現直後に胚が生育を停止し枯死した.‘ブルーダイヤモンド’を種子親にした場合には,非常に低い割合であるが,順化可能な雑種と思われる個体が得られた. 3.順化後温室で栽培した再性個体にはカシワバアジサイ特有の鋸歯が観察され,雑種であると判断された.しかし,雑種個体の全体的な形態は種子親の特徴を多く受け継いでいた.培養開始から2年後に胚珠から再生した雑種6個体のうち1個体が開花したが,花序は中心がやや山型に盛り上がったテマリ型で,種子親の‘ブルーダイヤモンド’の特徴が強く現れていた.
著者
工藤 暢宏 新美 芳二
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.428-439, 1999-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
6 13

アメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の有する不良環境適応性を'セイヨウアジサイ'(H. macrophylla)に導入することを目的として, 両種間で正逆交雑を行った.1. H. macrophyllaとH. arborescensの花粉を塩化カルシウムとともに管ビンに入れ, -20, 5および20℃の温度条件で貯蔵し, その後の花粉発芽能力を経時的に調査した.-20℃で貯蔵した花粉の発芽能力は長期間(10∿12か月間)維持されたが, 5℃で貯蔵した花粉は, 5ヶ月で, 20℃で貯蔵した花粉は5日でそれぞれ発芽能力を失った.2. 自家, 種内および種間交配ではどの組合せでも両種の花粉は柱頭上で良く発芽し, 花粉管は花柱内を伸長して子房内の胚珠に達した.3. 自家および種内交配では, 両種とも完熟種子が得られた.しかし, 得られた完熟種子数は品種や組み合わせで異なり, さく果当たり種子数は, H. macrophyllaでは10∿54粒, H. arborescensでは19∿38粒であった.4. 得られた種子をポットと無菌培地に播くと, いずれの場合でも, H. macrophyllaでは58∿85%の発芽率であり, H. arborescensの発芽率は, 14∿52%の範囲であった.H. arborescensの実生の第一本葉には毛茸の発生があり, これが両種の実生を区別する形態的特徴であった.5. 種間交配では, 種子親にH. macrophyllaを用いた場合, わずかに種子が得られ, H. arborescensの場合, 種子が得られなかった.得られた種子を人工培地に無菌播種した結果, 実生が得られた.しかし, これらは幼植物期にすべて枯死した.6. H. macrophyllaを種子親にした種間交配では交配60∿150日後の胚珠を培養して実生が得られたが, 子葉展開後生育を停止しすべて幼植物期に枯死した.一方, H. arborescensを種子親とした種間交配では交配60日後の胚珠を培養して1個体の実生を得たが, 子葉展開直後に枯死した.7. H. macrophylla×H. arborescensで胚珠培養により得た実生の子葉に形成された不定芽を切り取り, BA添加培地で継代した結果, 根系をもつ植物体が得られた.その茎頂部に花粉親のH. arborescensに特有の毛茸が発生したため, 雑種植物であると判断した.再分化植物は生育が緩慢で試験管外では生育しなかった.
著者
新美 芳二 阿部 誠 野水 利和
出版者
新潟大学
雑誌
新潟大学農学部研究報告 (ISSN:03858634)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.29-33, 2005-08

無加温ビニルハウスで栽培したオオミスミソウは開花したあと前年に形成された葉を展開したあと,根茎先端でクラウン形成を始めた.クラウンはまず鱗片葉を形成し,花芽は4月中旬頃に鱗片葉の基部に初めて観察された.鱗片葉形成および花芽分化は7月下旬まで求頂的に続き,花芽数はクラウン当たり7個となった.その後一部の花芽が枯死し,開花直前の3月下旬のクラウン当たりの生存花芽数は約4個前後であった.4種類の温度に設定した照明付インキュベーター(16h明期/8h暗期,PFD 20-30μmols-1・m-2・sec-1)で栽培した株では,15℃恒温条件下で栽培した株で花芽分化・発達が最もよく,花芽数が最大となった.Four year-old H. nobilis plants cultivated in a non-heated polyethylene house began to develop a new apical bud (crown) on the top of rhizome after flowering and leaf development. The bud formed scale leaves, followed by development of flower bud in the axils of each scaly leaf. Flower bud was observed late in April for the first time, and the initiation and development of bud scales and flower buds continued acropetally to late July. About 5 to 7 flower buds per crown were formed until late August, and then a few flower buds wilted. About 4 flower buds per crown existed late in March. When plants were cultivated in the incubators at different temperatures under a 16 photoperiod with fluorescent lamps at a PFD of 20-30μmols-1・m-2・sec-1, the initiation and development of flower buds were stimulated best at 15℃ compared to other temperature conditions.
著者
工藤 暢宏 木村 康夫 新美 芳二
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-12, 2002-04-01
被引用文献数
2 11

カシワバアジサイの有用形質をセイヨウアジサイに導入することを目的として, 種間雑種の作出方法を検討した.1. セイヨウアジサイを種子親, カシワバアジサイを花粉親にした種間交配では, 受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大し, さく果を形成するが, 完全な種子はできなかった.2. 交配後のさく果から胚珠を取り出し培養すると胚が発達して, 肥大した胚が出現することが確認された.しかし, 'ハルナ'を種子親にした場合では, 出現直後に胚が生育を停止し枯死した.'ブルーダイヤモンド'を種子親にした場合には, 非常に低い割合であるが, 順化可能な雑種と思われる個体が得られた.3. 順化後温室で栽培した再性個体にはカシワバアジサイ特有の鋸歯が観察され, 雑種であると判断された.しかし, 雑種個体の全体的な形態は種子親の特徴を多く受け継いでいた.培養開始から2年後に胚珠から再生した雑種6個体のうち1個体が開花したが, 花序は中心がやや山型に盛り上がったテマリ型で, 種子親の'ブルーダイヤモンド'の特徴が強く現れていた.
著者
新美 芳二 中野 優 牧 健一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.919-925, 1996-03-15
被引用文献数
5 11

リーガルユリ (<I>Littttm regale</I>) の強健な性質をヒメサユリ (<I>L. rubellum</I>) に導入することを目的として,両種間で相互交雑を行った.<BR>1.リーガルユリ×ヒメサユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉により低率 (3.3%)ながら有胚種子が得られた. しかし, それらの種子はバーミキュライトおよび試験管内に播種しても発芽しなかった. リーガルユリ×ヒメサユリの雑種実生は受粉30~60日後に胚珠培養を行うことにより得られ, その頻度は5.3~6.7%であった.<BR>2.ヒメサユリ×リーガルユリにおいては, 開花当日の柱頭受粉では受粉後に花粉管が花柱内で伸長を停止し, 受精が起こらなかった. しかし, 開花2~5日後に柱頭受粉を行うことにより花粉管伸長が促進され,開花5日後の受粉では胚形成が確認された. 花柱切断受粉は胚形成に効果がなかった. 開花5日後の受粉により得られた胚は, 胚珠培養を行っても救出することができなかった.<BR>3.リーガルユリ×ヒメサユリから得られた個体の雑種性はrDNA分析により確認された. 調査したすべての雑種は二倍体であり, 花粉稔性は3%以下であった. 雑種個体の花色は淡桃色であった. また, 二重咲きの花をもつ雑種も1系統得られた.