著者
牧 千里 澤田 瑞穂 丹羽 有紗 池田 賢司 川村 光信 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.31-36, 2013 (Released:2013-02-07)
参考文献数
13

症例は56歳女性.15年前に2型糖尿病と診断され,内服治療を行うも血糖コントロールは不良であった.1997年~2009年まで6回の入院歴があるが,この間インスリン分泌は保たれ,抗GAD抗体は常に陰性であった.2010年1月第7回入院時,抗GAD抗体4.6 U/mlと低値陽性となり,インスリン分泌を保持するため持効型インスリンを少量導入した.10ヶ月後の第8回入院時,HbA1c 9.7 %,尿中CPR 18.5 μg/day,血中CPR食前0.7 ng/ml,食後2時間2.1 ng/mlとインスリン分泌は低下し,グルカゴン刺激試験でのCPR Δ6分値1.0 ng/mlと低値,抗GAD抗体は1.2 U/mlと正常範囲に低下していた.本症例では抗体価は低値で,陽性の期間も短期間であったが,抗GAD抗体の存在から内因性インスリン分泌低下に自己免疫機序が関与している可能性を考えた.