著者
宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.262-268, 2018-02-10 (Released:2019-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
5 5
著者
菊地 博 川崎 聡 中山 均 齋藤 徳子 島田 久基 宮崎 滋 酒井 信治 鈴木 正司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.461-466, 2010-05-28 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは,インフルエンザAおよびB感染症の治療,予防に有効な薬剤である.慢性維持透析患者に対する,治療,予防に関する報告は少なく,その推奨量は決定されていない.2007年2月19日~20日,火木土昼に透析を受けている患者9人のインフルエンザA発症を確認した.発症患者の病床は集積しており,施設内感染が強く疑われた.透析患者は感染のリスク,重症化のリスクが高いと考えられ,感染の拡大を防ぐため,オセルタミビルの治療投与のほか,予防投与も行った.385名の透析患者に,十分なインフォームドコンセントを行い,同意が得られた患者にオセルタミビル75 mg透析後1回経口投与を行った.アンケート等の協力が得られた339名を調査対象患者とした.9人が治療内服,299名が予防内服を行い,31名が内服しなかった.治療内服後,全員が速やかに解熱し,重症化例を生じなかった.予防内服者には,インフルエンザ感染を生じなかったが,非予防内服者に2名の感染を認めた.この2名も同様の内服により,速やかに解熱,軽快した.内服者において,報告されている臨床治験時にくらべ,消化器症状の発症率が低かったが,不眠を訴える割合が多かった.また,内服者は非内服者にくらべ,臨床検査値異常は多くなかった.血液透析患者におけるオセルタミビル75 mg透析後1回投与は,健常者の通常量投与にくらべ,血中濃度が高値となると報告されている.過量投与による副作用の報告はなく,また,今回の透析患者339名の検討でも,安全性には概ね問題がないと考えられた.予防投与は有効で,当施設におけるインフルエンザAアウトブレイクを収束させた.
著者
桜林 耐 高江洲 義滋 萩野下 丞 竹田 徹朗 宮崎 滋 甲田 豊 湯浅 保子 酒井 信治 鈴木 正司 高橋 幸雄 平沢 由平
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.241-247, 1997-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的: 血液透析の循環血液量 (BV) に対する影響を検索する第一歩として, 除水のない条件で検討した. 方法: クリットラインモニター (IN-LINE DIAGNOSTICS社製) で慢性血液透析10症例の無除水血液透析施行中のヘマトクリットを計測し, BVの変化を算定した. BVの変化 (ΔBV) を, mono-exponential関数: ΔBV(%)=A×〔1-exp(-B×t)〕-C×t, t: time (hour) で近似し, 各係数を臨床指標と比較検討した. 結果: 1) 全症例でBVの増加を認めた. BVの変化は上の近似式と良好に相関した (0.92<r<0.99, p<0.0001). 2) BVの増加率を表わす係数Aは8.66±2.92で, 体外循環充填量 (200ml) と回路回転血液量 (180から200ml/分) との和の全血液量に対する割合に相当した. また係数Aは胸部X写真の心胸比 (CTR) (r=0.88, p=0.0008), 透析開始前血清アルブミン濃度 (r=0.80, p=0.03) と有意に正相関した. 3) BVの増加速度を表わす係数Bは2.02±0.77で, BV増加は2時間で全増加量の99.9%に達した. 4) 係数Cは-1.64から1.06とばらつき, 臨床指標との相関はなかった. 結論: 無除水血液透析ではBVは経時的に増加した. この推移はmono-exponential関数に良好に近似され, その増加量が体外循環に必要な血液量にほぼ等しく, CTRや血清アルブミン濃度に正相関したため, BV増加の機転は体外循環に喪失する血液の補填であると考えられた. 近似式の係数Aは, BV増加の程度を表わし, hydrationやplasma refillingを反映する指標として有用であると考えられた.
著者
小川 渉 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.301-306, 2015 (Released:2015-05-01)
参考文献数
20
被引用文献数
10 17

肥満は2型糖尿病や脂質代謝異常症、高血圧に代表されるような動脈硬化性疾患のリスク因子に加え、蛋白尿や非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)、高尿酸血症など様々な疾患・病態の発症基盤となることから、肥満をどのように診断し、どのような対象に介入を行うかは重要である。わが国では欧米のような高度の肥満者は少ないにも関わらず、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧などの肥満に関連する疾患の有病率は比較的高いことから、欧米より厳しい基準で肥満を診断することは妥当と考えられる。日本肥満学会では、肥満に関連する健康障害の有病率に関する疫学調査などから、BMI18.5以上25未満を普通体重とし、これを超えるものを肥満、下回る者を低体重と定義している。また、肥満の中でも、医学的に減量を必要とする病態を肥満症と呼び一つの疾患単位として捉えることを提唱してきた。肥満症の考え方として、現在健康障害を持つものだけではなく、将来健康障害を発症する可能性が高いものを含む点が重要である。内臓脂肪型肥満が健康障害を伴いやすいハイリスク肥満であることは知られている。内臓脂肪型肥満の診断手順は、ウェスト周囲長によるスクリーニングの後、腹部CT検査により内臓脂肪面積を測定する。一方、日本人間ドック学会・健康保険組合連合会により公表された「新たな検診の基本検査の基準範囲」は、特定の疾患を持たず、特定の疾患の薬物治療を受けていない集団の平均的なBMIの分布範囲を示したものにすぎない。この基準範囲にはハイリスク肥満である内臓脂肪型肥満が含まれており、これらは減量介入が必要な肥満症患者であることを強調したい。健診や人間ドックに従事される方は、これらの診断基準や基準範囲の設定の手法、目的の差異を十分に理解の上、業務にあたられたい。
著者
宮崎 滋
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-10, 2007-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

The Clinical Guidelines for the Treatment of Obesity published in January 2006 by Japan Society for Study of Obesity are reviewed in respect of the standard treatment, management and prevention of obesity and metabolic syndrome, and the relationship between these disorders.
著者
蘆立 恵子 川村 光信 石井 昌俊 長谷 和正 東田 寿子 安藤 矩子 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.449-454, 2000-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
11

症例は38歳男性. 30歳時に2型糖尿病と診断され一時当院通院するも血糖コントロールは不良であった. 1994年9月頃より口腔内の白苔, 味覚異常, 嚥下困難が出現し, 再度当院受診. 内視鏡検査で口腔・食道力ンジダ症と診断された. 抗真菌薬での治療に難治であり1998年3月血糖コントロールおよびカンジダ症の治療目的で入院となった. インスリン療法を開始し良好な血糖コントロールが得られるとともにカンジダ症は急速に治癒した. しかし退院後, 血糖の悪化に伴いカンジダ症が再発した.食道力ンジダ症は免疫低下状態でしばしばみられ, 糖尿病でも血糖コントロール不良例や自律神経障害の強い例での報告が散見される. 本例は明らかな免疫不全がないにもかかわらず再発を繰り返し, 抗真菌薬のみでの治療には難治であった. しかし, 血糖コントロールの改善により速やかに治癒した. このことから, 感染症の予防や治療には厳重な血糖コントロールが極めて重要であると考えられた.
著者
牧 千里 澤田 瑞穂 丹羽 有紗 池田 賢司 川村 光信 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.31-36, 2013 (Released:2013-02-07)
参考文献数
13

症例は56歳女性.15年前に2型糖尿病と診断され,内服治療を行うも血糖コントロールは不良であった.1997年~2009年まで6回の入院歴があるが,この間インスリン分泌は保たれ,抗GAD抗体は常に陰性であった.2010年1月第7回入院時,抗GAD抗体4.6 U/mlと低値陽性となり,インスリン分泌を保持するため持効型インスリンを少量導入した.10ヶ月後の第8回入院時,HbA1c 9.7 %,尿中CPR 18.5 μg/day,血中CPR食前0.7 ng/ml,食後2時間2.1 ng/mlとインスリン分泌は低下し,グルカゴン刺激試験でのCPR Δ6分値1.0 ng/mlと低値,抗GAD抗体は1.2 U/mlと正常範囲に低下していた.本症例では抗体価は低値で,陽性の期間も短期間であったが,抗GAD抗体の存在から内因性インスリン分泌低下に自己免疫機序が関与している可能性を考えた.
著者
菊地 博 川崎 聡 中山 均 齋藤 徳子 島田 久基 宮崎 滋 酒井 信治 鈴木 正司
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.461-466, 2010-05-28
被引用文献数
1

ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは,インフルエンザAおよびB感染症の治療,予防に有効な薬剤である.慢性維持透析患者に対する,治療,予防に関する報告は少なく,その推奨量は決定されていない.2007年2月19日~20日,火木土昼に透析を受けている患者9人のインフルエンザA発症を確認した.発症患者の病床は集積しており,施設内感染が強く疑われた.透析患者は感染のリスク,重症化のリスクが高いと考えられ,感染の拡大を防ぐため,オセルタミビルの治療投与のほか,予防投与も行った.385名の透析患者に,十分なインフォームドコンセントを行い,同意が得られた患者にオセルタミビル75 mg透析後1回経口投与を行った.アンケート等の協力が得られた339名を調査対象患者とした.9人が治療内服,299名が予防内服を行い,31名が内服しなかった.治療内服後,全員が速やかに解熱し,重症化例を生じなかった.予防内服者には,インフルエンザ感染を生じなかったが,非予防内服者に2名の感染を認めた.この2名も同様の内服により,速やかに解熱,軽快した.内服者において,報告されている臨床治験時にくらべ,消化器症状の発症率が低かったが,不眠を訴える割合が多かった.また,内服者は非内服者にくらべ,臨床検査値異常は多くなかった.血液透析患者におけるオセルタミビル75 mg透析後1回投与は,健常者の通常量投与にくらべ,血中濃度が高値となると報告されている.過量投与による副作用の報告はなく,また,今回の透析患者339名の検討でも,安全性には概ね問題がないと考えられた.予防投与は有効で,当施設におけるインフルエンザAアウトブレイクを収束させた.
著者
宮崎 滋 石田 美恵子 久保 善明 中川 高志 川村 光信 松島 照彦 林 洋 片岡 亮平 内藤 周幸
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.803-812, 1983

両側副腎皮質結節性過形成によるCushing症候群に,左副腎褐色細胞腫を合併した症例を経験した.この2疾患の合併の報告はこれまで見られていない.症例は46才,女性.主訴は皮疹,高血圧で,満月様顔貌,中心性肥満を認めた.内分泌学的検査では, ACTHは測定感度以下, cortisolは高値で, cortisol,尿中17OHCSはdexamethasone大量にて抑制されず, metyrapone, ACTHには過剰反応を示した.副腎シンチで両側とも描出され,副腎静脈撮影で円形の血管圧排像が見られた. CTで左副腎の腫大を認め, 1979年10月左副腎を摘出し,皮質結節性過形成に褐色細胞腫の合併が判明した. ACTHとcortisolとの間には逆相関がみられ,術後一旦cortisolが低下するとACTHは増加し,それに従つてcortisolが上昇するとACTHは低下した.このことは下垂体と副腎との間に二元支配の存在を疑わせるもので,相互に刺激・抑制を繰り返しながら徐々にnegative feedbackの作動点が上昇し,結節性過形成を生じるのではないかと考えられたが,視床下部・下垂体だけではなく副腎自体にも何らかの異常が存する可能性もあると思われた. ACTH分泌抑制の目的でbromocriptineを投与し, ACTH・cortisolは一旦低下し臨床症状も改善したが, 1年後には悪化した. Cushing症候群と副腎褐色細胞腫の関係は,術後ACTHの上昇を認めたので異所性ACTH症候群ではないと思われ,多発性内分泌腺腺腫症としての2疾患の合併の可能性も考えられず,現在までのところ明らかではない.