著者
高井 政貴 牧 岳彦 高橋 裕一 大ヶ瀬 浩史
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

〔はじめに〕EOG滅菌に関しては特定化学物質としての法規制や都条例による排出規制により従来と異なる運用が求められている.一方,現状の滅菌装置では滅菌時間の短縮の目的もあり滅菌時のEOG濃度を700 800mg/Lと比較的高濃度で制御する場合が多い.法規にしたがった安全運用のためにはエアレーションを滅菌器内で実施する必要があり,その際はエアレーションに数時間を要するため,滅菌時間短縮のメリットは少ない.また,滅菌に使用されたEOGは大半が消費されずに大気放出されるため,高濃度のEOGは環境汚染の原因となるばかりでなく,経費面の無駄につながる可能性もある.本研究では以上のような状況を勘案し,低濃度のEOG滅菌を再評価する目的で,滅菌性能の確認を行った.〔方法〕現在医療機関で主流となりつつあり陰圧式の滅菌装置を用い,EOG濃度760および400mg/Lにおいて滅菌処理を行い,指標菌Bacillus subtilis ATCC9372株のD値を測定することにより滅菌性能の評価を行った.市販のストリップ型BI(レーベン社製)を用い,D値の測定は生残曲線法にて行った.また,AAMIのテストパックによる両濃度における滅菌性能の比較も行った.〔結果〕今回の試験より,EOG濃度760mg/Lにおいて得られたD値は2.3分,400mg/LのD値は4.9分であり,EOG濃度と死滅速度定数には正の相関が認められた.また,AAMIのテストパックの結果からも今回求めたD値の信頼性が確認された.〔考察〕今回の研究によりEOG濃度を従来の約1/2に設定しても滅菌時間を2倍にすることにより同等の滅菌性能が得られることが確認された.エアレーションを含めた場合,全行程時間に対し大幅な延長は無く,排出量とランニングコストを50%程度削減できる可能性が示唆された.