著者
大ヶ瀬 浩史 武智 誠 大塚 壽 柴田 大法 菊池 幸 土手 健太郎
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.31-35, 1995-10-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

医療従事者 (看護婦) 10人について, 速乾性擦式アルコール手指消毒剤を用いた5つの手指消毒方法を比較検討した. すなわち, 0.2% (w/v) 塩化ベンザルコニウム含有83% (v/v) エタノール製剤 (ウエルパス®) 3mlを手指にとり積極的に指先と指間を消毒する3ml推奨法, ウエルパス® 3mlを足踏み式ディスペンサーで噴霧式により手指にとり擦り込む日常行っている3ml噴霧法, ウエルパス®をハンディボトルにより1mを噴霧式で手指にとり擦り込む日常の1ml噴霧法, 0.2% (w/v) グルコン酸クロルヘキシジン含有83% (v/v) エタノール製剤 (ヒビスコール®) の専用電動噴霧消毒器 (1回3.2ml) より手指にとり擦り込む日常の自動噴霧法, 日本薬局方消毒用エタノール専用噴霧消毒器 (1回0.8~0.9ml) より手指にとり擦り込む日常のアルコール法の指先・指間の消毒効果を比較した.消毒後, 指先, 指間とも推奨法は他の方法と比較し生残菌数は低値を示し, 有意な差が認められた (Mann-Whitney U検定, p<0.01).さらに消毒後の菌数を各指で比較すると, 3ml噴霧法を除いて母指が最大で, 1ml噴霧法の母指と小指およびアルコール法の母指と示指および小指で有意の差があった (Mann-Whitney U検定, 各p<0.05およびp<0.01).以上より, アルコール手指消毒において十分な薬液量を使用し, 推奨法のように手指全体に薬液が行き渡るように注意を払い, 指先と指間を念入りにラビングする方法が有効であることが示唆された.
著者
高井 政貴 牧 岳彦 高橋 裕一 大ヶ瀬 浩史
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

〔はじめに〕EOG滅菌に関しては特定化学物質としての法規制や都条例による排出規制により従来と異なる運用が求められている.一方,現状の滅菌装置では滅菌時間の短縮の目的もあり滅菌時のEOG濃度を700 800mg/Lと比較的高濃度で制御する場合が多い.法規にしたがった安全運用のためにはエアレーションを滅菌器内で実施する必要があり,その際はエアレーションに数時間を要するため,滅菌時間短縮のメリットは少ない.また,滅菌に使用されたEOGは大半が消費されずに大気放出されるため,高濃度のEOGは環境汚染の原因となるばかりでなく,経費面の無駄につながる可能性もある.本研究では以上のような状況を勘案し,低濃度のEOG滅菌を再評価する目的で,滅菌性能の確認を行った.〔方法〕現在医療機関で主流となりつつあり陰圧式の滅菌装置を用い,EOG濃度760および400mg/Lにおいて滅菌処理を行い,指標菌Bacillus subtilis ATCC9372株のD値を測定することにより滅菌性能の評価を行った.市販のストリップ型BI(レーベン社製)を用い,D値の測定は生残曲線法にて行った.また,AAMIのテストパックによる両濃度における滅菌性能の比較も行った.〔結果〕今回の試験より,EOG濃度760mg/Lにおいて得られたD値は2.3分,400mg/LのD値は4.9分であり,EOG濃度と死滅速度定数には正の相関が認められた.また,AAMIのテストパックの結果からも今回求めたD値の信頼性が確認された.〔考察〕今回の研究によりEOG濃度を従来の約1/2に設定しても滅菌時間を2倍にすることにより同等の滅菌性能が得られることが確認された.エアレーションを含めた場合,全行程時間に対し大幅な延長は無く,排出量とランニングコストを50%程度削減できる可能性が示唆された.