著者
牧野 均 生駒 一憲
出版者
北海道文教大学 ; 2004-
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.40, pp.55-68, 2016-03

運動イメージ課題をリハビリテーションに効果的に応用するために,一人称イメージと三人称イメージの運動イメージ想起の方法の違いに着目し,機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging ,以下f-MRI)を用いて脳活動部位の比較を行った。対象は,一人称イメージ課題群19名,三人称イメージ群17名である.結果,一人称イメージ課題群では,被験者自身の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合,第三者の動く足趾映像を見ながら運動実行課題を行った場合と比較して,左角回と右紡錘状回の活動が増加した.三人称イメージ課題群では,第三者の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合,被験者自身の動く足趾映像を見ながら運動実行課題を行った場合と比較して,左中前頭回ブロードマンの9野の後部領域の活動が増加した.一人称イメージ課題群と三人称イメージ課題群の群間比較では,三人称イメージとしての被験者自身の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合,一人称イメージとしての第三者の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合と比較して,左右の舌状回と右前帯状皮質の活動が増加した.これは,一人称イメージ課題と三人称イメージ課題に被験者自身と第三者を組み合わせることで相補的な制御で課題の遂行を行った可能性があることを示す.以上の結果より,一人称イメージを運動イメージ課題として用いる場合は被験者自身の足趾を見つめさせつつセラピストが他動的に足趾を動かすこと,三人称イメージ課題を用いる場合は向かいに座ったセラピストの足の動作を模倣しつつ同時にセラピストが他動的に足趾を動かすことが自己を認識しつつ効果的にリハビリテーションを行う可能性があると考える.