著者
真部 真里子 久賀 奈央子 牧野 麻美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2006 (Released:2006-09-07)

【目的】腸管上皮細胞は、生体に必要な栄養素を取り込むだけでなく、異物の侵入を排除する物理的バリアである。タイトジャンクションと呼ばれる密着結合により互いに接着して、物質を選択的に輸送している。しかし、酸化ストレスに晒されると、種々の細胞構成成分が損傷し異物の侵入を許すことから、身体活動に悪影響を及ぼすと考えられる。そこで、本研究では、野菜による腸管上皮細胞における酸化ストレス防御能について検討した。【方法】腸管上皮細胞モデルであるヒト結腸癌由来Caco-2細胞に、過酸化水素を添加し酸化ストレス状態とした。酸化ストレスによる細胞損傷の指標として、経時的な経上皮膜電気抵抗値測定によるタイトジャンクションの密着度、LDH活性測定による細胞膜の健全性ならびに細胞内グルタチオン量を用いた。【結果】生のピーマン、ブロッコリー、アスパラガスの水抽出液を添加すると、酸化ストレスによる細胞損傷が抑制された。アスパラガスでは、茹で加熱、レンジ加熱を行ってもその効果は維持された。一方、カボチャ添加では、生では酸化ストレス防御能は認められなかったが、茹で加熱、レンジ加熱を施すと酸化ストレスによるタイトジャンクションの弛緩や細胞膜の損傷を抑制できた。また、ゴボウ添加では、生、茹で加熱品ともに酸化ストレスによる細胞損傷を抑制できなかったが、レンジ加熱では、細胞内グルタチオン量以外の測定項目においてやや酸化ストレス抑制傾向が認められた。このように、腸管での酸化ストレス防御能を期待して野菜を摂取する場合、調理方法を考慮する必要があると考えられる。また酸化ストレス防御能は、一指標ではなくいくつかの指標を用いて検討する必要性が示唆された。