著者
松井 彦郎 太田 英仁 内田 要 林 健一郎 犬塚 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.232-238, 2020-10-01 (Released:2020-12-04)
参考文献数
10

背景:小児重症例の約半数を占めている小児循環器疾患の集中治療は歴史的に小児循環器医および小児心臓外科医が中心で診療してきた一方で,社会的に集中治療の専門性整備の必要性が増加している.目的:小児循環器診療における集中治療専門性に関する現状調査・解析を行うことで,集中治療専門性の整備状況を評価し,今後の重要な課題を明確にする.方法:本研究では2019年10月現在の公的ホームページに掲載されている利用可能の専門医・研修施設・厚生労働省保険算定・人口統計の情報を用いて,全国における①小児科医・小児循環器医の集中治療専門医取得状況・分布,②小児循環器診療施設の集中治療専門研修施設状況,③集中治療室管理料算定数と専門医数の比較を行い,小児循環器領域における集中治療専門性の課題を描出した.結果:集中治療専門医を有する医師は小児科専門医の0.6%(99/16,545名),小児循環器専門医の1.1% (6/538名)であり,地方21県においていずれも不在であった.小児循環器関連施設(170施設)中,集中治療専門医研修施設認定は56%(96/170名)と低値であり,大学病院・総合病院においては専門医取得困難な環境が推察された.都道府県別の小児年齢の特定集中治療室算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の医師数との比較では都市部に医師が多く,小児特定集中治療室管理料は全国の約20%の普及にとどまるのみであった.結語:日本の小児循環器領域の集中治療専門診療環境は,専門医診療と診療報酬算定において施設・地域間格差があり,集中治療体制の整備は小児循環器診療の重要な課題と考えられる.
著者
小野 博 香取 竜生 犬塚 亮 今井 靖 賀藤 均
出版者
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.49-56, 2014

<b>背景:</b>Marfan症候群に対するGhent基準が2010年に改訂された.改訂基準では大動脈病変,水晶体脱臼,遺伝子変異に重点がおかれ,骨格所見はsystemicscoreに一括された.<br><b>方法:</b>2008年4月~2009年12月に東京大学医学部附属病院小児科マルファン外来を受診し,従来のGhent基準(旧基準)においてMarfan症候群と診断または疑いでフォローされている症例38例について,改訂Ghent基準(改訂基準)における診断の詳細を検討した.<br><b>結果:</b>旧基準を満たした症例は13例,改訂基準は22例であり有意な増加を認めた(p=0.0039).改訂基準を満たした22症例のうち17例(77%)に家族歴を認めた.改訂基準を満たした症例の内訳は,大動脈所見が10/22例(45%),水晶体脱臼が10/22例(45%),systemic score≧7が4/22例(18%),FBN1遺伝子変異が2/3例(67%)であった.<br><b>結論:</b>改訂Ghent基準は旧基準より簡易化され診断が容易になった.さらに<i>FBN1</i>遺伝子解析が普及すれば,診断精度の向上および診断数の増加が期待される.