著者
永田 雅 猪川 元興 吉住 禎夫 吉田 泰治
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.841-855, 1986 (Released:2007-10-19)
参考文献数
27
被引用文献数
44 48

本論文の目的は冬期北西季節風下において,朝鮮半島東岸沖の日本海西部上に現れる収束雲帯の形成機構を調べることである。いくつかの異なった地表の条件の下での数値実験によって,朝鮮半島と日本海の海陸の熱的な性質の対照が,この収束雲帯の形成に対して本質的な役割を果たしていることが示される。すなわち,冷たい陸地の上では気団変質がより弱く,その結果,対流圏下層で朝鮮半島南東端に中心を持つ中規模の高圧部が,そしてその東端に収束帯が形成される。この収束帯が積雲対流を活発化させ,帯状に組織化する。また,朝鮮半島北方の山地によるブロッキングの効果がこの収束帯を強めるように働く。
著者
猪川 元興
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.81-102, 1984 (Released:2007-03-09)
参考文献数
18
被引用文献数
5 5

多変量最適内挿法を一般化した、統計的客観解析法が示される。一般化は二点で行なわれる。第一点は、斉次線形束縛条件が、その定式化の中に陽に組み込まれていること、第二点は、一般化された方法は、気候値及びその分散、予報値及びその予報誤差分散の両方を統一的に用いるが、従来の多変量最適内挿法は、それらの一方をファーストゲスとして用いるだけである。 線形束縛条件と合致する共分散行列は、ちょうど変分客観解析における束縛条件と同様に、その線形束縛条件で束縛された空間への射影演算子として機能することが、Phillips (1982) とは異なる方法で示される。 又、ここで示される方法は変分客観解析を次の二点において改良したものとみなせる。第一点は、この方法は統計的に最適な値を与えるが、変分客観解析は、その統計的意味があいまいであること、第二点は、この方法は、不規則に分布した観測点データから直接格子点上の解析値を与えるが、変分客観解析は変分法による修正を行なう前にあらかじめ観測値を格子点上に内挿する必要がある。 この方法のいくつかの応用例が示される。例の中で、変分客観解析の弱い束縛の統計的意味が示される。又、高度場、風の場の多変量客観解析に適用できる、発散共分散モデルも議論される。 この方法は、多変量最適内挿法と、線形束縛条件を課した場合の変分客観解析の両方をその特別な場合として含む。この方法を介して、多変量最適内挿法と、変分客観解析の間の関係が基本的に理解される。